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この発言はさすがに予想外だったようで珍しく房太郎が表情を崩す。
左へと首をかしげたままの状態で静止した彼の髪がサラリと傾きに沿い滑り落ちた。
言葉を探しているのか少し間が空いた末に思うところがあるような表情で房太郎が目を細める。
しかしいつもと変わらない軽い調子の声音を取り繕ったような声で問うた。
「そりゃまた…何があったんだ？」
『……祖父の仇だったから』
物理的距離は普段と変わらないが漂う多少気まずい空気に負けじと端的に告げる。
監獄という環境下なので理由を聞くと納得した表情を見せた。
詳しく話す気はないが今までの言動からなんとなく察したのだろう。
けれども生粋のおじいちゃんっ子といえども祖父の仇からの両親殺害は思考が単純すぎる。
第七師団時代に感情が高ぶり意図せず吐き出してしまった過去の事件の真相と祖父について。
鶴見中尉に言口にしたことは嘘ではない。
だが殺害に至るまでの理由は他にもあった。
『それと、親は私を愛していなかった』
房太郎から視線を外しどこまでも広がっているようにも思える銀世界を瞳に映す。
蓋を開けたらよくある話かもしれない、前の職場でもそういう奴はいた。
父親が家に通わないようになり夫に入れ込んでいた母親が壊れ結果的に一家全員殺した奴は。
少し違うところもあるが私のところの家庭もそんな感じだった。
『両親はどこにでもいる仲のいい夫婦だったよ、見ている方が恥ずかしくなるくらい人前でもいちゃついて。
私が生まれても結婚後何年経っても新婚みたいに愛を囁きあってた』
「それじゃあ何で…」
お互いをあだ名で呼びあったり、食事を食べさせあったり、子供の前でも平気で接吻をする異常なくらいの仲の良さ。
普通だったらそんな二人の愛の結晶である私はおかしいぐらい可愛がられたんだろう。
先程の発言とは矛盾するこの言葉に房太郎が口を挟む。けれど答えは簡単。
両親が普通じゃなかったからだ。
『両親が愛していたのは嫁と夫だったんだ。
母と父じゃない、一人の男と女だった』
「…………」
『…親は、あいつらは自分達が愛し合ったという過程だけが重要だった。
私が誕生した結果なんておまけにしか過ぎなかった』
喋っているうちにどんどん語調が強くなっていくのが自分でもわかる。
房太郎の前だからと自制は効かせつつ最大限の憎しみと怒りをこめて言い捨てた。
『私はただ、あいつらの愛を確かめるためだけに産まれたモノだった』
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蛸山葵(プロフ) - モノクロ(蒼桜)さん» コメントありがとうございます。彼女の過去に需要があるのかどうか不安だったのですが、この作品を通じて何かを感じていただいたようでとても嬉しいです。親バカのようですが私も河上ちゃんのことが好きなので彼女の幸せを願っていただき大変光栄です。 (2月19日 21時) (
レス) id: eddcdf4797 (このIDを非表示/違反報告)
モノクロ(蒼桜)(プロフ) - ぐおぉぉおぉお、、、供給過多、、、。とてもよかったです、。「蛙の子は蛙」だとしても、、ほんの少しでも幸せに生きてくれぇぇぇぇ、、、。 (2月19日 17時) (レス) @page8 id: c1e95133f7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蛸山葵 | 作成日時：2024年1月16日 21時
