味噌が入った汁 ページ1
『門倉、獲れた！』
「戻してこい馬鹿」
外の警備中、監獄周辺の川を泳いでいた鮭を抱えて門倉に差し出したら流れるような罵倒が投げかけられた。
尾びれをピチピチと元気よく動かしているので鮭にまだ息はあるようだが、この威勢もそう長くは続かないだろう。
脂ものっていそうだし是非門倉に調理してもらいたい次第だ。
『そんなこと言わずにどうだ、切り身にでもするか？
それとも干してシャケトバにして酒のつまみにでもするか？』
「人の話を聞けよ、川に戻す一択に決まってんだろ。
そこらへんのもんを勝手に取って持ってくるな。
それにどんなに凝ったもん作っても、結局お前が一番食べんのは味噌汁だろ？」
『まぁそうだけど…』
未だに根気よく跳ね続けている鮭を手にしつつ、門倉の言葉に否定できず返答を濁した。
殆ど何でも食べられる私だが、その中でも味噌汁がずば抜けて好きなので最近夕飯の献立は悩んだ挙句結局なんの捻りもない味噌汁と白米に落ち着いている。
と言っても料理ができないので門倉に食べたい料理を伝えるだけだけれども。
『野菜以外に魚入れてもきっと美味くなると思うぞ』
「あんなに食ってたら流石に飽きるっつーの。
はぁ、それより刺身なんかどうだ？」
『…………』
私の魚推しに諦めがついたのかこうなったら無理だと経験上察したのか、軽くため息を吐いてから顎を摩り鮭の瞳を覗き込む。
しかし門倉の言動に眉を顰めた。
好き嫌いが少ないと自負しているため門倉の反応は何となく予想できる。
『刺身は反対、嫌い』
「どうした、珍しいな」
門倉が視線を手元の鮭から表情へと移した。
わかりやすく不機嫌さを表す私を不思議がり聞いてくる。
父親がよく鮭のツマミとして食べていたから、なんて言う私情マシマシな理由は門倉に押し切られそうだな。
『…生臭いからヤダ、やっぱ味噌汁に入れるべきだろ』
筋の通った理由を用意して門倉に告げる。
半分ぐらい本音なんだし大丈夫だろう。
結局は味噌汁が勝つんだよ、味噌汁が。
強引な味噌汁理論を頭の中で一人唱えていると、ふと門倉がポツリと溢した。
「っつーかさ、豚の入った味噌汁は豚汁って言うよな。
鮭が入った味噌汁は鮭汁とか言いそうだけでそう言うのないんだな」
『まぁ、味噌が入ってりゃそれは味噌汁だろ』
何やら面倒くさそうなことを語り始めた門倉に私は早急に手を打った。
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蛸山葵(プロフ) - モノクロ(蒼桜)さん» コメントありがとうございます。彼女の過去に需要があるのかどうか不安だったのですが、この作品を通じて何かを感じていただいたようでとても嬉しいです。親バカのようですが私も河上ちゃんのことが好きなので彼女の幸せを願っていただき大変光栄です。 (2月19日 21時) (
レス) id: eddcdf4797 (このIDを非表示/違反報告)
モノクロ(蒼桜)(プロフ) - ぐおぉぉおぉお、、、供給過多、、、。とてもよかったです、。「蛙の子は蛙」だとしても、、ほんの少しでも幸せに生きてくれぇぇぇぇ、、、。 (2月19日 17時) (レス) @page8 id: c1e95133f7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蛸山葵 | 作成日時：2024年1月16日 21時
