フラれた ページ3
.
「今日も無理やってん」
ぐでぇ、と二年二組の教室の隅で項垂れるのは明らかに背の高い女子。椅子に反対側から腰掛ける姿は不思議とだらし無くなく、逆にカッコ良さすら漂わせる。しかし、しゅんと頭を垂れた姿はしょぼくれた犬のようだ。
そんな様子を見ていた宮兄弟と角名、銀島は顔を見合わせる。またか、と。
「また今更やな」
「てか、何で毎回OK貰えると思とん。そっちの方が怖いわ」
「だって、相手あれでしょ」
銀島を除いた三人の言いぶりにAは親の仇を見るような目をする。なんやその言いぶりは。お前らあの人よりいい男の自信あるんか。明らかに目がそう訴えている。
恋は盲目とはよく言ったもので――――まさに宮Aがその状態なのだ。
「だって、あの人やで」
「北さんはカッコええやろ!!少なくともお前らより!!」
「それには同調し兼ねる」
「右におんなじ」
「いてまうぞコラ」
宮兄弟の妹として、入学当時から話題を呼んだAはその容姿とスペックの高さから忽ち人気になった。そんな彼女がいつからか好きだと言い始めたのは、男子バレー部の主将北信介だった。
二年生にとっては正論パンチで毎度毎度滅多打ちにされているせいか、苦手意識が広がりつつあったのだが。目の前の女はそんなことは関係無いと言った様子だ。
「大体、いっつも思うけど何で北さんなん!?背ェ小さいやん」
「侑お前黙れや、身長のこと言うたらアカン言うたよな」
「おれの妹めっちゃ怖い」
Aはフン、と鼻を鳴らすと椅子から立ち上がった。太腿丈のスカートから伸びる足はスラリと長い。女子の羨むような凹凸がハッキリした体は兄とてたまに見惚れる程だ。
頭のネジが多少外れていても、兄も他の者も彼女の容姿の良さは認めざるを得ない。
「Aちゃん、北さん辞めておれにしない?優良物件だと思うけど」
「角名にはやらんで」
「侑がシスコン発動せんでも、私は北さん一筋て決めとんねん」
「あら、角名フラれてもた」
「でも――――」
自分の教室へ帰ろうと背を向けたAは銀島の呟きに振り返る。他の者も一体何を言い出すのやら、と銀島の思案気味な顔を伺った。
銀島はふっと顔を上げると、キョトンとしたAの顔を真っ直ぐ見て
「一途言うても、Aちゃんもずっとフラれとんやん」
「銀、それは言わん約束やで」
「アッす、すまん!!」
口を抑えてももう遅い。Aは顔を真っ赤にすると泣き叫びながら廊下を走っていった。四人がその様子を見送るとすぐそこで先生に止められて廊下を走るなと怒られていたのだが。
259人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かなで(プロフ) - この間初めて読んだのですが、面白すぎて一気読みしてしまいました!評価ボタンが一つなのがとても惜しいです笑 これからも頑張ってください! (2020年3月8日 15時) (レス) id: e96d9c0e1e (このIDを非表示/違反報告)
ぴいち(プロフ) - 月埜さん» 月埜さん、コメントありがとうございます。連載当初から見ていただいて、こちらも感謝の気持ちでいっぱいです。最後までお付き合い頂きありがとうございました! (2020年2月26日 22時) (レス) id: f952b08383 (このIDを非表示/違反報告)
月埜(プロフ) - 完結おめでとうございます。公開初日から読ませて頂きました。月並みな言葉しか言えませんが、主ちゃんと北くんの関係が最初から最後まで本当に素敵だなと思いました。素敵なお話をありがとうございました! (2020年2月26日 18時) (レス) id: d1ca7a883a (このIDを非表示/違反報告)
ぴいち(プロフ) - 柿山さん» 柿山さん今回もお目に止めて頂きありがとうございます!!真っ直ぐな主人公とそれを蔑ろにしてくれない北さんのモダモダした関係が続きますが、気長に読んでいただけたら嬉しいです! (2020年2月14日 10時) (レス) id: f952b08383 (このIDを非表示/違反報告)
柿山(プロフ) - あああ〜〜もう今回も今回とて好きです!!!夢主さんの北さんに対する真っ直ぐすぎる感情表現が堪りません…!!しかもそれを雑に扱うのではなく、丁寧且つスパッと対応する北さんの在り方も素晴らしいです!!!これからゆっくりと楽しみにしております…!!! (2020年2月13日 22時) (レス) id: 296b088bbe (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ぴいち | 作成日時:2020年2月13日 21時