むず痒い ページ17
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明らかに北の態度が変わったと初めに気付いたのは大耳とアランだった。
休み時間トイレで鉢合わせた2人は並んで用を足しながらおもむろに口を開く。勿論、話題は二人とも気になっている北についてである。
「なぁ、最近の信介なんかおかしないか?」
「どうせAのことやろ」
「アッチも完全に参ってんねんな」
「おれ昨日の夜一時間電話で泣かれてん」
「うわそれキッツ」
大して悩みの種になった事がなかったAと北のことが、二人にとっては現在最大の悩みになっていた。しかし実は、北の様子がおかしくなったのはごく最近のことで。
一概におかしくなったと言うが簡単に言うと、北がAを故意に避け始めたのだ。
いつも廊下ですれ違えば北の元へ飛んでくるAだったが、何度か北が忙しそうに"スマン"と言えばあちらからアクションを起こしてくる機会が格段と減った。
しかし、北は別に忙しくもなんともない。まるでAから逃げるための口実のようにスマンと言い、Aも素直に北さんが忙しいならと直ぐに引き下がった。
そんな様子を見ていた二人には、北が初めてAを拒絶しているように見えたのだ。
「信介、今までAを邪険にすることなんか無かったから逆に心配になるわ」
「おれは信介は……本気でAのこと嫌がっとるんやないんやって思ってたんやけど」
「まぁ人の気持ちなんて、そう簡単に分かるもんやないってことやろな」
「じゃあ…迷惑やった、ってことか」
「それも分からへんけど」
アランと大耳は深くため息をつくと、手を洗いトイレの外へと出る。少し前まで、昼休みになれば三年の教室にAが遊びに来ていたのだが。
北が故意に避け始めてからは、ぱったりと来るのを辞めた。それがいい事なのか、悪いことなのか二人には分からなかったが…
「なんか、騒がしいやつが居らんと寂しいなぁ」
「せやな」
北の気持ちは分かりはしなかったが、元気な彼女の姿を見る機会が減った大耳とアランにとってはそれが寂しいことであると理解出来た。
北のどういった心境の変化か、それは知らない。しかし、今の状況よりもAが北に求婚していた、今までの方が彼らにとっては日常であり、いつも通りだったのだ。
「あーもー、どうせならAがはよ信介のこと婿に貰ってくれへんかな」
「めっちゃむず痒いん分かる」
「やろ」
大耳とアランは二度目のため息をつくと、それぞれの教室へ帰る。
Aの恋路は、二人のように本人よりもいつの間にやら周りの人間の方がソワソワしているのだ。
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かなで(プロフ) - この間初めて読んだのですが、面白すぎて一気読みしてしまいました!評価ボタンが一つなのがとても惜しいです笑 これからも頑張ってください! (2020年3月8日 15時) (レス) id: e96d9c0e1e (このIDを非表示/違反報告)
ぴいち(プロフ) - 月埜さん» 月埜さん、コメントありがとうございます。連載当初から見ていただいて、こちらも感謝の気持ちでいっぱいです。最後までお付き合い頂きありがとうございました! (2020年2月26日 22時) (レス) id: f952b08383 (このIDを非表示/違反報告)
月埜(プロフ) - 完結おめでとうございます。公開初日から読ませて頂きました。月並みな言葉しか言えませんが、主ちゃんと北くんの関係が最初から最後まで本当に素敵だなと思いました。素敵なお話をありがとうございました! (2020年2月26日 18時) (レス) id: d1ca7a883a (このIDを非表示/違反報告)
ぴいち(プロフ) - 柿山さん» 柿山さん今回もお目に止めて頂きありがとうございます!!真っ直ぐな主人公とそれを蔑ろにしてくれない北さんのモダモダした関係が続きますが、気長に読んでいただけたら嬉しいです! (2020年2月14日 10時) (レス) id: f952b08383 (このIDを非表示/違反報告)
柿山(プロフ) - あああ〜〜もう今回も今回とて好きです!!!夢主さんの北さんに対する真っ直ぐすぎる感情表現が堪りません…!!しかもそれを雑に扱うのではなく、丁寧且つスパッと対応する北さんの在り方も素晴らしいです!!!これからゆっくりと楽しみにしております…!!! (2020年2月13日 22時) (レス) id: 296b088bbe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぴいち | 作成日時:2020年2月13日 21時