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第十五章 ページ17

「αに襲われたんだよ、俺」


絞り出すように、裕翔は繰り返した。


「人気のない公園に連れていかれて……。

身体の中に別の体温が入ってくるのが怖かった。

何度嫌だって叫んでも、……アイツは止めてくれなかった」


その肩が引き攣ったように震えている。

目元を何度も擦っている。

彼の身体はやけに小さく見えた。


「……あんたのせいだよ」

「え?」


ぽつり、吐き出された言葉に動揺する。

俺が何かしたのか?

裕翔が嫌がることを?


「Aさんのせいだよ、こんなの」

「何か俺が嫌なことでもしたのか?

何処を直せばいいんだ、教えてくれ」

「違うよ」


相手の視線が床に落ちる。


「あの視線には慣れてるはずだったのに。

身体の中に出されるのも、避妊薬があればいいって。

項さえ噛まれなければ、それでいいって思ってたのに。


……嫌だって、思ってしまったんだ。

ずっと逃げたいって思った。

ずっと苦しかったし悲しかった。

あんな「無理やり」は初めてで、怖くて仕方なくて。

必死に項だけはって柄にもなく守った。


……ずっとAさんが脳内でちらついて、薬を飲んでも罪悪感は消えなかった」


ぽたり、とその瞳から水滴が零れ落ちた。

どくんと心臓が鳴る。

裕翔が、ぱっと顔を上げた。


「……お願い、好きじゃなくていいから。

俺の事、思ってくれてなくて構わないから。

だから、上書きしてよ、ねぇ。

この、怖いって思い、消してよ……っ」


俺にすがるように、スーツを掴む震えた手。

俺は濃ゆいフェロモンに流されないように息を吐いてから、その手を取った。




「……好きだ」

「……え?」


その瞳が揺れている。

涙で潤んでいる。

俺は、彼の手の甲に、軽く口づけた。


「好きだ、裕翔。

俺はお前と番になりたい。


だから、「恋人として」お前を抱かせてくれ」

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空弥(プロフ) - 桜坂さん» わああああ、よきですよきですっ。電車でイチャイチャしてるところめっちゃ書きたいです……。ありがとうございます、更新ゆっくりですが、お付き合いいただけると嬉しいです (2018年11月10日 21時) (レス) id: 87c9fca00c (このIDを非表示/違反報告)
桜坂(プロフ) - 以前コメントさせて頂いたものです!デートの案なのですが遠出して海を見に行くなどもいいのではないでしょうか?電車の小話とかも出来ますし、それとこれからもゆっくり頑張ってください (2018年11月7日 19時) (レス) id: 96c3d36cf4 (このIDを非表示/違反報告)
蒼紫(プロフ) - 希羽(  ̄▽ ̄)さん» 18↑のほうに書いてます。オブラートに包んでないので(汗)18になってからまた読みに来てください! (2018年9月9日 14時) (レス) id: 87c9fca00c (このIDを非表示/違反報告)
希羽(  ̄▽ ̄) - 第17話の間の話って、18↑ですか? (2018年9月9日 12時) (レス) id: 0d606e3b63 (このIDを非表示/違反報告)
希羽(  ̄▽ ̄) - もう最高ですぅぅぅ、、、。  私まだ18↑読めないんですよね、、、、。残念過ぎます、あと何年だろう。 (2018年9月9日 12時) (レス) id: 0d606e3b63 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:空弥 x他1人 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2018年8月24日 21時

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