Diabla姫と悪魔執事 :2章【u/s/s/s】

マニアな愛 ＊11 ページ29

私はうらたさんの膝の上に頭を預け膝枕状態だった。
目の前の彼は慈しむかのような視線を向け優しく髪を撫でてくれる。


うらたさんの瞳しか見えない。


周りの音すら聞こえない。




まるでこの世界に2人だけになった様な錯覚に陥る。




優しく、絆されて、溶けてしまいそうな



そんな空気を変えたのは突然に吹いた一陣の風で


風に吹かれて空高く舞い上がる無数の花びらは



やがてヒラヒラと揺れながらゆっくりと落ちてきた。



2人で空から降ってくる花びらのシャワーを浴びる。



無数の花びらのうちの一つが私の頬に落ちてきて
手に取れば大ぶりな白い花びらがそこにあった。



「これ…」


その花びらにはなぜか見覚えがあって、
私はうらたさんの膝からようやく起き上がり辺りを見回す。



外だということには気づいていたが、詳細は分からない。



………分からないはずだった。



目の前の景色を見て私は一瞬固まる。


だってそこは、いつか夢の中で見た古いカセットテープを再生したときのモノクロな屋上風景。



一面に咲き誇る月下美人が実際に私の目の前に広がっていた。



夢見心地のようにゆっくりと花壇に近づき、
目の前に咲く一輪の月下美人の前に腰を下ろし両手で花を包み込むように手を伸ばす。


一晩だけ咲く儚い花は凛と美しく
照らす月に白い花びらが反射し輝きを放っていた。


“潔白”と言うに相応しい白さと輝きに目が眩みそうだ。




「きれいでしょ、月下美人」



目の前の月下美人に見惚れているとすぐ近くで声がして、
ハッとして振り向けば半歩程後ろにうらたさんが立っていた。


ゆっくりと近づき、私の横に同じように腰を落とす。
うらたさんは流れるような手つきで自分の目の前の月下美人に手を伸ばし、優しく撫で微笑んだ。


花を愛でる彼の横顔から伺えるその目は
さっきまで自分に向けていた目に見えてドキリと心臓が音を立てる。

身勝手な気恥ずかしさに彼から顔を逸らし”そうですね”と小さく呟くと
そんな私の挙動もバレバレのようでうらたさんは小さく笑うとそのまま言葉を続けた。


「この屋敷の月下美人は枯れない。」

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