君想う夢・君恋し花

愛を売る人 … ２ ページ3

「…って、自分がソレ売ってりゃ世話ねぇよなぁ…」
「太夫(たゆう)？何か仰いました？」
「あ？べーつにぃ、、」

…ったく、独り言までイチイチ反応すんじゃねぇよ、マジうぜェ…

禿(かむろ)と言われる客あしらい見習いに背中を拭いて貰いながら、オレはうーん…と伸びをした

昨日も何人相手にしたかな…
噎せ返るような甘ったるい香水の香りが、今も肌のキメにまで纏わりついているようで、オレは禿からタオルを取り上げると、ゴシゴシ自分でカラダを拭いた

「太夫っ！そんなゴシゴシしたら肌が痛みますって！」
「ああ？なんだよソレ」
「太輔太夫は、ウチの廓の《ミカド》ですから、キズが一つでも付いてるとオレ達がオーナーに怒られるんですってば！！も、ソレ返してくださいっ！！」

禿のクセにこのオレに説教かよ、いい度胸してんじゃん…

「背中に引っかき傷とアトありますよ、どの客ですかね…薬付けときますね」って持ってきた木箱からチューブタイプの塗り薬を手に取る、背中に塗り付ける瞬間にその手を掴んで布団に組み敷いた

「…っっ！」
怯える顔がちょっと可愛いと思ってしまうオレ

のし掛るように押さえつけ、耳元に唇を寄せた

「付けてやろうか？…お前の背中にも…それともココがいい？」
そう言って腰の履き口から手を差し入れた…

あは、真っ赤になっちゃってかーわーいーいー、ウブいねぇ…コイツら水揚げ前だもんなぁ…

「太夫っっ！やめて下さいっって！オレソッチの気はありませんっっ！！」
「は、オレだってねぇわっバーカッ！」

揶揄うのもバカバカしくなって、押さえ込んだ力を緩めた途端、禿は転がるようにして部屋を出ていった


フン、つまんねぇの…


窓側の障子を開けると、もう日が高い…
陽の光なんざ浴びる価値もないオレ…

毎夜毎夜…オレを目当て来るクソみてぇな女どもを、この身ィ一つで満足させんのがオレのオ・シ・ゴ・ト…


ココは通称《花通り》にある女相手の廓《桃幻楼》
そしてオレは《ミカド》と呼ばれるNO.1の太輔太夫…


なんで、目が覚めちまったんだろ…


今日も今日とて…どうせ変わり映えのしねぇ一日が始まるだけなのに…


香水と交わりの香りが染み付いた毒々しい緋色の布団を蹴り飛ばし、オレは階下に降りて行った


「太夫、遅いぞ…」
「るっせぇな！、テメェらが規定以上のオンナぶっ込むからだろうが！」
「何をイキリたってんだ？‪α‬なら余裕だろ？」


「…テメェ、ぶっ飛ばされてぇのか？」
「事実だろ？」

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