Ｉ wish to be your only one …エピ１

佳き日のその後…８ ページ8

「ン…眩し…」

開けっ放しのカーテンから入る朝の光で、オレは目が覚めた…結局アノ後、…なかなか寝付けなくて…もしかしたら太輔、コッチに来てくれるんじゃないかと待っていたけど…いつの間にか眠ってしまったみたいで…

キングサイズのベッド…半分は今も空いたまま…１０年前のあの朝も、起きたら独りだったよな…ボンヤリしたアタマのまま、髪をクシャクシャっとして、オレは太輔がいるであろうリビングルームに続くドアを開けた…

「太輔…」
…ソコに太輔の姿は無くて…てっきりソファで寝てるもんだと思ってたオレは、リアルにあの朝を思い出した…
「嘘だろ…まさか太輔…っ！」

バスルームのドアを開けてもいなくて…なんでっ？
(クローゼット…スーツケース…っ)

祈るような思いで、ウォークインのスライドを開ける……太輔の黒のスーツケース…あった…

「ハァ…よかった…っ」
あの日と同じように、アメリカに帰ってしまったんじゃないかと思ってたオレは、ソコに置いてあるスーツケースに、心の底からホッとした…

「このスーツケース…アノ時のと同じだ…」
太輔の大好きなアメリカのバスケのナショナルチームのステッカーが今でも貼ってある…

「まだバスケ…好きなんだ…」
新人戦での太輔…ブザービートをキメて優勝して…夢の国でぇと…二人でキャラ耳付けて…ペアテディ買って…想い出が戻ってくる…そのどれも、太輔がいつもオレを喜ばせようとしてくれるものばかり…いつだってオレを笑顔にしてくれるのは、太輔の優しい想い…

Prrr…
部屋の電話がなる…フロント…？

「はい…」
「北山様、お目覚めだったんですね、おはようございます…松田でございます」
「あ、おはようございます…」

爽やかな松田さんの声に、ちょっとホッとするオレ…
「藤ヶ谷様から、先に出掛けるので、このお時間に電話をかけて、お目覚めでしたら朝食のルームサービスを届けてほしいと伝言承っております…これからお届けしてよろしいですか？」

「太輔が？」
「はい」
「あ、じゃ、お願いします…」
「かしこまりました…」

昨日…あんなコトが有ったのに、やっぱりどこまでも優しい太輔…キュっと胸が鳴る…それと同時に、太輔の寂しそうな背中が思い出されて…自分の想いを通し続けることに、罪悪感にも似た、迷いが生まれてくる…

「太輔…」

無意識に、オレはその名前を呟いた…

佳き日のその後…９→←佳き日のその後…７

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す