Ｉ wish to be your only one …エピ１

佳き日のその後…３ ページ3

オレがアメリカ行きを躊躇う理由…それは《仕事》だった…進路を決める時期、オレは自分の将来について今まで余り深く考えてなかった…サッカーが大好きで、友達といるのが楽しくて…でも太輔との出逢いがオレを変えてくれた…あんなにツラい想いをして離れて…１０年後、太輔とまた会えたとき、ちゃんとしてるオレを見てほしかった…太輔に隣に似合うヤツになっていたかった…

もともと、父さんの仕事を小さい時から見てて、製図板に向かう父さんの後ろ姿は、ホントにカッコ良くて…父さんの設計した建物に連れていってもらうことも嬉しかった…そしてあの教会…窓一面の向こう側に広がる青い空…太輔の想いを受け取った日に見えた、その景色を思い出す度に、太輔のいない寂しさを和らげてくれるように思えた…

こんな風に、誰かを癒してあげられるような場所を、自分で創ってみたい…

そう考えるようになったオレは、迷わず建築関係の大学を選んだ…もともと勉強があんまり得意じゃなかったから、オレの家庭教師はトモがメインで、裕太も自分の勉強もあるのに、時間つくって見てくれた…

みんなのお陰で、どうにか現役で大学生になれて…オレはソコから建築の勉強に没頭した…サッカーもやめた…、早く一人前の建築士になりたかったから…太輔と離れてる時間を、ただ寂しいだけの想いでムダに過ごしたくなかった…

最初に勤めたデザイン事務所、ここもみんなホントにイイ人で、オレはここで先輩達に、建築の基本から叩き直してもらった…新人が出せるコンペで、賞を貰えたのも励みになった…

そして、今年…父さんからウチの事務所で仕事しないかと誘ってもらったんだ…

…まだ勉強したいこと、経験したいことがたくさんある…父さんの技術も知りたい、堂本さんのスゴい才能も間近で見ていたい…

だけど…太輔の願いも…聞いてあげたかった…

(…何が正解なのか…わからないや…)

バスルームからリビングに戻ってくると、太輔が間接照明だけの部屋で窓の外を見ていた…
その陰影のハッキリした、キレイな横顔のライン…吸い込まれるように見いってしまう…

「フロ、あがったんだ…」
「うん…」
「おいで…」

ニコッと笑った太輔に手招きされて、オレは太輔の横に並んだ…フワッと同じボディソープの香りがする…そんなことすら幸せで嬉しくなる…傍にいて欲しい…太輔の言葉が思い出された…

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