恋蕾 ー ３

淡雪恋蕾 … １２１ ページ32

太輔と柊羽のキスは、オレにとって漣程度の揺らぎも起こさなかった

むしろ隠すことなく話してくれた太輔の潔さがオレを安心させてくれる…疚しいコトなど微塵にも無いのは、ハナから分かっていた

ただ、柊羽の心の変化を思うとやりきれなさでいっぱいになる…必死に自分の居場所を求め、刹那の繋がりにすら縋ろうとする柊羽が、オレは憐れでならなかった

どこまで…柊羽は傷付けばいいんだろう…

まっさらな心を、己のエゴで黒く塗り潰そうとする存在が許せなかった

「太輔…」
「ん？」
「オレに、何が出来る…」
「宏光…？」

「こんなにも誰かを許せないと思ったことは無い…一生懸命、自分の未来をキレイな色で彩りたいと努力してる柊羽を傷付けて平気な顔してるヤツがいる…絶対に許せない……っ、柊羽は、そんな風に扱われていい人間じゃない…こんなの、間違ってる…」

マグカップをテーブルに置き、オレはギュッと手を握りしめた

柊羽と同じだけの痛みや悲しみが、オレの中にそのまま入ってきた…


暴力に引き裂かれた心が、どれほど辛く苦しいものかをオレは身を持って知っている…、柊羽の想いは、あの日のオレそのものだから



だからこそ、幸せにしてやりたい…



太輔が、オレを全力で守りきってくれたように…




あの時も今も、オレにはその想いしかない…




大切な家族…




その笑顔が、いつもその人らしいものである為に…




オレは、オレの出来ること全部で





守るから…────

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