Innocent … 君想う日々２

守るべき人 … ５３ ページ6

結永様を咲島宅にお送りして、1時間近く経った


大人の背丈を越すほどの高さのある門の前に、小さな結永様が心細そうに立っている

やはり玄関までお連れした方が…と思わず車外に出ようとしたが、太輔様と宏光さんから「結永は一人で謝りに行くと言った、自分が決めたことは最後までさせてやりたい、手出しは無用」と言い渡されていた為、車の中から見守るしかなかった

けれど、どうにか咲島家の誰かが気付いてくれたらしく、門が開き結永様は中に入っていった

そこからの時間経過…

結永様は大丈夫だろうか？いや、あのお2人のお子さまならば、きっと決めたことをやり遂げる…

時にネガティブになりそうな気持ちを、ここまで結永様をお育てされた太輔様と宏光さんの深い愛情を思い返し、打ち消していった

手持ち無沙汰をハンドルを握る事で消化しつつ、結永様のお戻りを待った

しかし、まだか…？遅すぎないか？…

そう思った時、背の高い男性が小さな子二人を伴い門から出てきた

二人とも上下揃いの紺色の制服を着てつばの有る制帽を被っている、一人は結永様だった、楽しそうに笑いながら、同じ制服の男の子と年齢が高めの男性と歩いてきた

慌てて車外に出ると、私に気付いた結永様がパッと目を開き「皆川さーん！！」と可愛い声で呼んでくれた

そして私目掛けてスタートダッシュで走ってきてくれた

この様子から、結永様がご自分で決めたことをちゃんとやり遂げられたコトを知り、思わず片膝を付き両腕を広げた、結永様はまるでゴールテープを切る勢いで私の胸に飛び込み、弾けるような笑顔を見せてくれた

「お帰りなさいませ、結永様」
「みながわさん、ただいまぁ！」

ニコニコと可愛い表情で私を見ると、「あのね、あきとくんとお父さん！」と後ろを振り返った

「君が皆川くんか、お待たせして申し訳なかった、咲島だ」

「咲島会長でございますね、お初にお目に掛かります、藤ヶ谷家の執事、皆川耕作と申します、結永様のお世話係も兼務しております」
そう伝えると、咲島会長の目元がふと綻んだ

「そうか、今日は結永くんを連れて来てくれてご苦労だった、万事は上手く収まったと太輔くんに伝えて貰えるか？」

張りのあるよく通る声は風格を感じさせた、そして結永様のお気持ちがちゃんとお友達に伝わった事を知り、私の胸に安堵感が押し寄せた

「畏まりました、その旨主に申し伝えます」
「頼むな…」

「彬人くんのお父さん、カッコイイねー」と結永様が微笑んだ

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