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「あははっ逆に何だと思ってたの?」
嘲笑するように冷たい目で私を見てくる美玲。エレベーターのウィ〜ンという音がやけに大きく耳につき、私は顔を歪めた。
『(何となく想像はしてたけど…)』
あまりにも、酷すぎる。
「アイドル界なんて、顔が良いほど上に立つんだよ?それにぃ、有名なイケメンとヤっちゃうだけで周りからは尊敬され煽てあげられるからさぁ、私得でしかないんだよねぇ」
うるさい、
「渉くんとスるの、気持ちよかったなぁ!もし渉くんが有名人だったら絶対に付き合ってたのにぃ…」
うるさい、だまって、
「どーお?実の妹に旦那さん取られちゃったんだもんねぇ?どんな気分?やっぱ悔しい?あははっ!けどお姉ちゃん、途中から渉くんに愛されてないことくらい、分かってたよねぇ?」
だまってよ、ちがうの、
「けどさぁ、お姉ちゃんも私のこと言えないよねぇ?だってお姉ちゃん、」
カチャン、とエレベーターのドアが開いた。
慌てて美玲の口を塞ごうとした私の腕を、ニヤリと笑みを浮かべてひらりと避けた。
「浮気、してたもんねぇ!」
…あぁ、なんで、
「…あぁ、ごめんねぇ?皆に聞こえちゃったかなぁ?」
『……』
「…あ!渉くんだぁ!」
は?
驚いて目を上げた私の視界に、気まずそうに顔を逸らす渉の姿が映った。その隣には、ペットボトル片手にこちらには気付いていない様子の坂田さん。
「…あれっ?Aさんやん!昨日ぶりやなぁ!」
『ぇ、ぁ…、っこんにちは、!』
こちらに気づき、笑顔で駆け寄ってきた坂田さん。一方で美玲は渉に近づくと、そのまま甘えるように腕を絡ませた。
「うらさん?…何、しとるん?」
美玲に腕を絡められた渉に、坂田さんは驚いたように目を見開いて言葉を失う。それに気付いた美玲は、腕を振り払おうとした渉の腕を、今度は自分の胸に押し付けた。
「…おい、離せよ」
「えぇー?もぉ、釣れないなぁ!」
渉の低い声に、渋々といった様子で腕を話した美玲。呆然と立ち尽くす坂田さんを無視して、渉はそのまま奥の方へ行ってしまった。
「…君、如月美玲さんやっけ?」
暫くして我に戻った坂田さんは、頬を膨らませていじける美玲にそう話しかけた。
「はいっ!如月美玲で…す、」
高い声で返事をした美玲は、坂田さんを見るなり目を見開いて固まった。そして、目の奥を光らせる。
「…貴方の、お名前は?」
完全に、雄を狙う雌の目だった。
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ハクト(プロフ) - Naoさん» 私も書きながら思いました…特に冷たい笑顔で言われると特に鋭く突き刺さりそうです笑応援ありがとうございます!続編でもよろしくお願いします! (2020年7月1日 22時) (レス) id: 2aaa8e08bf (このIDを非表示/違反報告)
Nao(プロフ) - センラさんに悪女って言われると、直接言われてないけどグサッと来ますね。笑続編待ってます!頑張ってください! (2020年7月1日 21時) (レス) id: b92cb2f456 (このIDを非表示/違反報告)
ハクト(プロフ) - Naoさん» 応援ありがとうございます!とても心強いです(*^^*)毎日更新していく予定なので、今後も楽しみにして頂けると嬉しいです! (2020年6月30日 20時) (レス) id: 2aaa8e08bf (このIDを非表示/違反報告)
Nao(プロフ) - こういうドロドロしてるやつ好きなんですよ…更新される度にハラハラドキドキして面白いです!更新待ってます!頑張ってください! (2020年6月29日 21時) (レス) id: b92cb2f456 (このIDを非表示/違反報告)
ハクト(プロフ) - 翡翠琥珀さん» コメントありがとうございます!読者の皆様に楽しんで頂けるよう、今後も精進してまいりますので、最後までお付き合い頂けると幸いです(*^^*) (2020年6月29日 20時) (レス) id: 2aaa8e08bf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハクト | 作成日時:2020年6月19日 17時