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窓から月明かりが覗く真夜中。
辺りはもう真っ暗なのに、何故か全く寝付けない。クーラーの効いた部屋で私は一人、上体を起こした。
あれから頭痛や眩暈も治まり、体調はかなり回復した。だが、万が一の為にと坂田さんか私と同じ部屋に寝ることになり、それを聞いた志麻が「じゃあ俺も」と言い出し、結局3人で寝ることになったのだ。
『寝れないなぁ…』
私は割と睡眠は深い方で、普段は苦労することもなく普通に寝られるのに。
何故か今夜は寝れなかった。
「…あれぇ、Aさん?」
突然後ろから、少し眠そうな坂田さんの声が聞こえた。窓辺に座って月を見ていた私は、ビクッと肩を揺らす。
「…あ、そんなところに居ったの」
『はい。…なかなか寝付けなくて』
「そっか、」
そのまま体を起こした坂田さんは、私の横にやってくる。少しだけ寝癖の付いている髪の毛に、小さく笑みが溢れた。
『坂田さんこそ、何故この時間に…?』
「…あぁ、僕看護師でよく一晩中患者さん看とったから、浅い眠りは得意なんよ。」
その分普段は寝坊しちゃいますけど、と悪戯っぽく笑った坂田さんに、些か微笑ましい気持ちになる。
「折角だし、志麻くんも起こさん?」
『え』
「あれ、志麻くんって寝起き不機嫌やっけ…?」
志麻を起こそうと伸ばしかけた坂田さんの手を、慌てて掴んで止める。
そう、志麻の寝起きはとてつもなく機嫌が悪い。だからある意味、彼がお酒に強くて有難かった。
「なら、Aさんが眠くなるまて一緒に話さん?」
『…え、いいの?』
『ええよええよw元は俺の目的、Aさんの看病やし!』
『…ありがとう。』
とにかく優しい。
私は坂田さんに感謝の気持ちを込めて、にっこり微笑みかけた。
「なぁ、ひとつええ?」
『?…はい』
「うらさんと、何かあった?」
射抜くような瞳で私をじっと見つめてくる坂田さん。その中に彼自身の心配も含まれていて、私はゴクリと喉を鳴らした。
『さか、た…さんは、』
「うん」
『…自分の大切な相手の本心が分からないとき、どうやって調べますか?』
は?と一瞬呆気に取られたような表情を見せた彼だが、にっこり笑って即答した。
「訊く!相手が嫌がってもしつこく訊き続ける!結局、それに尽きると思うで?」
『な、なるほど…』
坂田さんは真っ直ぐだ。
どこまでも自分を持ち、貫ける、
強い人間だ。
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ハクト(プロフ) - Naoさん» 私も書きながら思いました…特に冷たい笑顔で言われると特に鋭く突き刺さりそうです笑応援ありがとうございます!続編でもよろしくお願いします! (2020年7月1日 22時) (レス) id: 2aaa8e08bf (このIDを非表示/違反報告)
Nao(プロフ) - センラさんに悪女って言われると、直接言われてないけどグサッと来ますね。笑続編待ってます!頑張ってください! (2020年7月1日 21時) (レス) id: b92cb2f456 (このIDを非表示/違反報告)
ハクト(プロフ) - Naoさん» 応援ありがとうございます!とても心強いです(*^^*)毎日更新していく予定なので、今後も楽しみにして頂けると嬉しいです! (2020年6月30日 20時) (レス) id: 2aaa8e08bf (このIDを非表示/違反報告)
Nao(プロフ) - こういうドロドロしてるやつ好きなんですよ…更新される度にハラハラドキドキして面白いです!更新待ってます!頑張ってください! (2020年6月29日 21時) (レス) id: b92cb2f456 (このIDを非表示/違反報告)
ハクト(プロフ) - 翡翠琥珀さん» コメントありがとうございます!読者の皆様に楽しんで頂けるよう、今後も精進してまいりますので、最後までお付き合い頂けると幸いです(*^^*) (2020年6月29日 20時) (レス) id: 2aaa8e08bf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハクト | 作成日時:2020年6月19日 17時