セカンドレディー【USSS】

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マンションのエレベーターに乗り、最上階へ向かう。渉の反応が怖くて、途中でエレベーターが壊れて止まったらいいのに、と不本意にも思ってしまった。

だがそんなハプニングは起きることなく、無事にドアの前に着いた。恐る恐る指を伸ばし、インターホンを押す。


ﾋﾟﾝﾎﾟｰﾝ…


『…家に居ないのかな？』


家の中からは、物音一つしなかった。
私は小さく首を傾げながら、バックの中から鍵を取り出し、鍵穴に差し込んだ。


『…渉？』


玄関に入って靴を確認したが、普段彼が履く靴はなくなっていた。

けど、見覚えのない靴が、ひとつ。


「はーい、どちら様ですか？」


え？


「すみません！少し立て込んでて…、……え？」


お互いの視線が合い、驚いたように目を見開く。

驚きたいのは私の方だ。
アイドルみたいなくりくりの大きな目に、長く綺麗な睫毛。そして、私とは正反対の長くふわふわの髪の毛。


『な、んで…ここ、に…？』

「えーそれ私の台詞〜」


妹の、美玲がいた。


「渉くん、今日は仕事だから私に家事をするよう頼んできたから来てあげたのにー」

『ど、ういうこと…？』

「もぉ〜お姉ちゃんこそどうしたの？もしかしてお隣さんに住んでたとか？」


甘い香水の匂いが漂ってくる。
思わずむせ返りそうになりながら、私は強張った頬を無理やり動かして口を開く。


『私のいまの名字、知ってるでしょ？』

「え〜たしか、浦田Aだっけ？」

『そう。ここに、住んでるの。』


カラコンの入った大きな目を、わざとらしく更に大きく見開く美玲。…そんな演技、しなくていいのに。


「まあいいや。渉くんに連絡しとこ〜」


これまた薄ピンクの可愛らしいスマホを取り出して、画面を操作していく。形の良い細い眉と唇が、くるくると回るように表情を変化させていた。


「もぉ〜…、」


やがて不満そうな声を漏らすと、美玲は頬を膨らませてから玄関の方に歩いて行った。


「お姉ちゃん！また次会ったとき、よろしくねぇ〜！」


私も渉のこと好きだから、と宣戦布告するような笑みで、美玲はマンションを出て行った。

考えなくても分かる。
渉の浮気相手は美玲で、私が家にいない間に美玲は自分で家の中に入っていた。


合鍵、私たち二人だけの物だったのに。


けど何故か、不思議とショックは少なかった。




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