Chapter4・・残夢 ページ20
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「チッ」
忌々しげに舌打ちをした渉は、私から手を離して玄関の方へ向かった。
急に解放された私は、クーラーの効いた冷たい空気に小さく身震いをする。
「おい坂田、何の用だ」
「えっ?今日うらさん家で遊ぶ約束しとったよね?」
「は?……あぁ悪ぃ、忘れてた。」
「いや、別に大丈夫なんやけど、…忙しかったらまた出直すけど今大丈夫?」
「あぁ、今開ける」
どうやら坂田さんらしい。
ということは、私は部屋に籠もってた方がいいかもしれない。
そう思って立ち上がった瞬間、後ろから突然抱きつかれた。
「どこ行くの」
「渉…、部屋に戻るだけだよ。」
「だめ、ここにいて。」
今日の渉はどこか強引だった。
一瞬でも目を離していたくない、とでもいった雰囲気で、私が離れようとした瞬間に引き留める。
「あ、その人がうらさんの奥さん?Aさん、やっけ?」
『あ、はい!初めまして、浦田Aです。』
「俺は坂田悠!気軽に坂田でええよ」
『はい!よろしくお願いします!』
軽く挨拶をして、目の前の坂田さんに微笑みかける。途端動きが止まった坂田さんに、私は疑問を感じて視線の先を辿った。
「……何。」
隠す様子もなく、渉が坂田さんを睨んでいた。
坂田さんは最初全身を強ばらせたが、どうやら渉の睨みには慣れているらしい。
すぐに苦笑を浮かべた。
「はいはい、ごめんなうらさん」
「……」
渉は渋々といった様に、坂田さんを睨むのを止める。そして、二人でゲームを起動してすぐに遊び初めてしまった。
「おrrrrrr!」
「ちょっうらさぁぁああんん!!wwww」
「バカがよぉ!」
「ねぇやめてぇぇぇえええ!!!俺死ぬ!!死ぬから!!!俺一応うらさんの味方なんやけど!!?」
「これがゲームの楽しみ方であーる。」
「ねえこれうらさんも敵に殺されるやんww数的に絶対勝てないやろwww」
「いや、まだチャンスはあr……、…。」
「死んだぁwwww」
いつも私の前では見せない、心から楽しんで巫山戯ている渉の様子に、新鮮な気持ちで二人を見つめる。
時折坂田さんが渉に寄りかかって、それを渉が笑いながら押し返して、坂田さんにちょっかいをかけ始める始末。
『(今のうちに、買い物に行ってこよ)』
二人がゲームに集中している間に、私はこっそり部屋を抜け出す。そしてそのまま、家の外に出た。
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ハクト(プロフ) - Naoさん» 私も書きながら思いました…特に冷たい笑顔で言われると特に鋭く突き刺さりそうです笑応援ありがとうございます!続編でもよろしくお願いします! (2020年7月1日 22時) (レス) id: 2aaa8e08bf (このIDを非表示/違反報告)
Nao(プロフ) - センラさんに悪女って言われると、直接言われてないけどグサッと来ますね。笑続編待ってます!頑張ってください! (2020年7月1日 21時) (レス) id: b92cb2f456 (このIDを非表示/違反報告)
ハクト(プロフ) - Naoさん» 応援ありがとうございます!とても心強いです(*^^*)毎日更新していく予定なので、今後も楽しみにして頂けると嬉しいです! (2020年6月30日 20時) (レス) id: 2aaa8e08bf (このIDを非表示/違反報告)
Nao(プロフ) - こういうドロドロしてるやつ好きなんですよ…更新される度にハラハラドキドキして面白いです!更新待ってます!頑張ってください! (2020年6月29日 21時) (レス) id: b92cb2f456 (このIDを非表示/違反報告)
ハクト(プロフ) - 翡翠琥珀さん» コメントありがとうございます!読者の皆様に楽しんで頂けるよう、今後も精進してまいりますので、最後までお付き合い頂けると幸いです(*^^*) (2020年6月29日 20時) (レス) id: 2aaa8e08bf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハクト | 作成日時:2020年6月19日 17時