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「嶺二、長話してんなよ。」

「っ!!」

奥から、確かに黒崎さんの声がした。
どうしよう、
ここを真っ直ぐに進めば、会いたかった彼に、真正面から会えるのだ。

「…れ、嶺二さん!
今日はツアーの曲を渡しに来たんです。
こっちが楽譜で、原譜がこっちです。
手直しが必要でしたら連絡ください。
あと、音源と差し入れのケーキです!」

ぐいっと嶺二さんの胸元に、楽譜とケーキの入った紙袋を押し付けた。

「ちょ、Aちゃ…」

「ご、ごめんなさい!
もう行きます。」

私がその場を去ろうとした時、
彼の瞳に私が写ってしまった。


「嶺二、早く…。」

一瞬、時が止まった気がした。



「A…」

彼の口が確かにそう動いた。

私の名前を呼んだ。

今度は猫にじゃなく、私に…。


「そ、それじゃあ!!
頑張ってください!」

「ちょっと!?Aちゃ…



ってランラン!?待って、どこ行くの!?」





私が先が見えないほど長い廊下を無我夢中で走り出した時、後ろで確かに嶺二さんがそう叫んだ。



「A!!」

黒崎さんの声がすぐ後ろでした。


だめ、だめだめ、

振り返ったら、だめ。

そう思い目を固く瞑った。
それが原因で、なんとも見事に階段を踏み外す。

「あっ…」

気付いた頃には私の体は宙を舞っていて、あとは重力に身を任せ、あの硬い地面に叩きつけられるだけの運命だった。



…はずなのに



「…ってぇ…。」

「…。」

地面に倒れた衝撃はあったものの、私はいつの間にか、あの大好きな優しい香りに包まれていた。

ずっと触れたかった温もりと、優しい香りが、今目の前にある。

そう思うと自然と涙が出てきた。


「っ!?おい!大丈夫か!?」

「くっ、さき、さ…ん」

「あ?頭打ったか?」

黒崎さんが私の頭をグリグリ撫で回す。
あの大きい手が、私の頭に触れている。

「ごめ…なさい…。」

「…どこで何してたんだよ。」

「ずっと、曲を作ってて、でも、今日できたから渡しに来て、それで
…」

「あー、分かったから。
もう泣くなよ。」

「いかないで…。」

「…?」



もう、だめ。
あなたに触れられた温もりのせいで、これ以上我慢することなんて出来ない。

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ぴかんち(プロフ) - aiaiさん» わ〜!!ありがとうございます!! ユーザー名違うんですけど、翔ちゃんのアイコンなので、よろしくおねがいします!!! (2018年5月11日 22時) (レス) id: 1c983642ca (このIDを非表示/違反報告)
aiai(プロフ) - ぴかんちさん» ほんとですか!!私の載せとくので良ければフォローください!@aiai_Seiyuで見つかると思うんで…そうですね!頑張ります! (2018年5月6日 22時) (レス) id: cf55e6d6ff (このIDを非表示/違反報告)
ぴかんち(プロフ) - aiaiさん» 社会人だと平日に余裕でイベント参戦出来るのでほんっと強みです笑 ライブは土日多いので戦争ですけど… Twitter!やってます!! (2018年5月6日 19時) (レス) id: 1c983642ca (このIDを非表示/違反報告)
aiai(プロフ) - ぴかんちさん» そうですね〜!わかります(;_;)ぴかんちさんTwitterとかやられてるんですか??私も来年社会人デビューです!ぜひイベントで会いたいです! (2018年5月2日 21時) (レス) id: cf55e6d6ff (このIDを非表示/違反報告)
ぴかんち(プロフ) - aiaiさん» 社会人、正直しんどいです!笑 行く時間も帰る時間も学生と全く違うので… わー!イベント基本ぼっち参戦なので、会えたら嬉しいです…(T ^ T) ただ当たったら当たったで物販かほんとに心配ですよね、ペンライト無しの参戦だったら悲しすぎる… (2018年5月1日 20時) (レス) id: 1c983642ca (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぴかんち | 作成日時:2017年11月30日 1時

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