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とは言ったものの、中々チャンスは来なかった。
毎日毎日食べ物を貰うだけの日々。
合間にこの部屋をくまなく調べてみたりもしたけど、悲しいかな窓1つなく出入口は鍵のかかった扉1つだけ。
脱出できるとしたらあそこだけ。
何度も作戦を練って脱出を試みたけど、全て失敗に終わった。
ついには鉄でできた足枷をはめられてしまって、もうなすすべもない。
流石のリュウセイも心が折れてしまったのか、次の作戦の話すらしなくなった。
今日はいつもより外が騒がしい。
街に着いたんやろうか。
けどもうどうでもいい。
カチャっと鍵が開く音がして顔を上げる。
あぁ、また食事の時間か。
「どえっ！？」
入ってくるなり変な声を出したのはいつもの男ではなく、見知らぬお兄さん。
「可哀そうに。ちょっと待っときや！」
焦った様子で俺たちの傍に駆け寄り、足枷を外してくれる。
この人、何でピッキングできるんや？
不思議に思いながら自由になった体でリュウセイを見ると、同じように不思議そうな顔で見ている。
「よし、もうこれで自由やで！」
自由……？
俺ら助かったん？
ニコッと笑うその顔を見て、自然と涙が流れた。
「この船に乗ってた男たちは……？」
カスカスな声で問うリュウセイ。
「ああ、全員降りてもろたよ。この船人身売買してたみたいでな、君らが売られる前で良かったわ。」
どこの誰かもわからないが、拘束を解いてくれたという事は本当に助かったという事だろう。
そうでなかったら目の前の扉を開けっぱなしになんてしないはず。
助かった。
そう実感すると更に溢れ出る涙。
「俺ら、助かった……？」
リュウセイを見ると今にも溢れそうな涙。
ああ、今までずっと我慢してたんや。
リュウセイも俺と一緒で不安やったんや。
そう思うともう止まらなかった。
お兄さんに抱きしめられて、声を上げて二人でわんわん泣いた。
「もう大丈夫やで。俺は2人の味方やからな。」
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作者名：かんた | 作成日時：2021年10月8日 23時
