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一生分の涙を流した気がして顔を上げると、お兄さんの肩はビショビショ。
慌てて「ごめんなさい！」と離れる。
「全然ええよ。不安やったな。もう自由やから家に帰り。」
お兄さんの言葉に顔が曇る俺達。
そうや、助かったのは良かったけど俺達これからどうしよう……。
リュウセイも何とも言えない表情で俺を見ている。
「家族に、売られてしもたんで帰るとこ……ないんです。」
言葉にするとまた泣きそうやったけど、もう受け入れるしかない。
受け入れてリュウセイと生きていくしかないんやって思ってグッと我慢した。
「そうなんかぁ……。参ったなぁ。」
そう言ってバツが悪そうに頭をかくお兄さん。
何かマズイことでもあるんやろうか。
「俺、海賊なんよ。」
背筋が凍るってこういう事を言うんやな。
お兄さんが言うには、海賊や言うても独立したばっかり。
船がないから調達しようとしたところ、丁度人身売買の密船が停泊していると情報を掴んだから乗り込んでいただこうとした。
そしたら俺たちを見つけて解放した。今ここ。
「どうしようかな〜。」
腕を組んで考えるお兄さん。
一難去ってまた一難と言わんばかりのピンチ。
人身売買の男たちは俺たちを商品として扱ってたから殺しはしなかった。
けど、このお兄さんは海賊。
人殺しとか関係ないやろう。
船長とかにバレたら殺される、やからどうしようか考えてるに違いない。
「あっ、そうや！君ら着いて来て。」
閃いた！と言わんばかりの顔で俺たちを手招きして部屋を出ていく。
「これ、着いて行った方がええん？」
「寧ろ着いて行かな殺されたりするんちゃう？」
リュウセイの正論に、2人して重い腰を上げた。
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作者名：かんた | 作成日時：2021年10月8日 23時
