月下美人の君.5

震天動地 ページ29

秦国を激震させた王騎死後から一年が経ち、武威を失墜した秦国は、隣接する各国がジワジワと国境を侵され始めた。


だが、ここに至り…秦国の民は全員が気づいた。

今こそ奮い立たねばいけないことをーーー。




信 「またAの事を考えていたのか…羌瘣」


一人夜の宴会から離れて、星空を見ていた羌瘣。

話しかけてくる信を見ても、すぐに顔を戻した。


羌瘣 「………それは皆同じだ。


どこかでAの事を想っている…」



信 「お前が心配しなくても、きっと大丈夫だ。


…なんたって、大将軍の娘だからなッ！」


そう言って、いつものようにカカカカッと
笑う信の声に励まされる。



…できたらまた逢いたい。

温かく包み込んでくれる彼女に。


そんな彼らの元に次の日の朝、
咸陽から驚くべき知らせが入る。



⭐

その頃、同じように軍師学校にいた蒙毅、河了貂にも同じ知らせが届いた。


男 「大変だッー！！！

蒙毅、河了貂ッ！…趙の宰相が秦に来趙するぞ！


しかし、驚くのはそれだけではない。

これから、来趙する趙国の今の宰相は



あの、李牧だッ！！！！」



蒙毅 「… ッ！！？」

河了貂ッ「…ッなんだって？！」



蒙毅 「… いったい、どういうつもりでしょうか」


六大将軍 王騎を討った李牧ーー


王騎将軍と言えば、幼少の頃から初恋の想いを寄せている娘のAの事を思い出してしまう。

兄の学友として、今の自分と同じように軍師学校に通っていた彼女。

はじめて見た時から…今思い出すと恥ずかしいが、お嫁にきてほしいと告白した、小さい頃の自分。


それでも彼女は、
「大人になったらね…」と笑顔で答えてくれた。


子ども相手に言ったことと…
蒙毅も分かっていながらも、どうしても期待してしまうのだった。


そんな彼女の大切な父親が、今回亡くなり…
Aの苦しみはいかばかりだろうか。


その苦しみを与えた、張本人がここ咸陽に来る。



いずれ、もっと成長して

彼女の苦しみを消し飛ばす男になりたい。


ーーそして、生涯、Aを守れる男になる。


そう、改めて胸に誓い
…蒙毅は人知れずに拳に力を込めた。

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