月下美人の君.5

【政】依依恋恋.6 ページ11

その頃、急ぎ政は数日分の公務を一気に片付け問題のある場所へと足を速めた。

薄暗く幽閉されたその場所は、気持ちいいものではない。しかし、重苦しい扉の前に先客がいた。


政 「…！…瑠衣か！」


瑠衣 「…政様！」


二人して顔を見合わせたが、事情はお互いに分かっていた。

政 「なぜあの者が…選ばれたかは知らないが
こんな事に彼女を巻き込みたくない。」


瑠衣 「……本当にお心当たりはございませんか？

……私、思い出してしまいましたの。

ある時、成蟜様が「面白い女を見つけた」と呟いているところを…。

それはきっと…政様も関わっていらっしゃるはずよ」


政 「…！…俺のせいで…」

どこでどう情報が漏れたか分からないが…
俺に関わったせいで、Aが巻き込まれたのは明白だった。
ならば、きっと普通のお見合いではなく
なにか彼女の身に危機が訪れているかもしれない。


政は自らその重い扉に手を触れると、
何やら話し声が聞こえるので、耳を澄ました。



成蟜 「…これは凄い！

いいぞ…っ、…もっとだ！

Aが欲しい！！

もっと俺に見せろ！」



A「ダメです！

…これ以上は恥ずかしい///」



政が聞いた瞬間に、「もしや…」と汗が止まらない。もしAがあられもない姿で乱れていたら、
俺は生きる希望を失うかもしれない…。
A……。

胸をギュ…と抑えても、心臓に刃物が突き刺さったように痛みが、命を奪おうとする。


瑠璃も同じ気持ちだったらしく、その顔は真っ青でカタカタと手が震え始めた。




嘘だ…と信じて、弱々しくも扉を押す……。

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