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返事はないままにガチャリ、とドアが開いて、お母さんが顔を出す。
「おかえり」
「…ただいま」
「こんばんは」
その声にお母さんが私の横を見て、少し驚いた顔をした。
「ああっ…びっくりした、のんちゃん！久しぶり！」
「お久しぶりです」
ふふ、と鼻を掻いて笑ったのんちゃんが「あの」と続ける。
「…遅くまでごめんなさい」
「フフッ、こんくらいなら全然ええよ。のんちゃんならここまでちゃんと一緒に帰って来るし」
「もう高校生やしね」と笑うお母さん。
お母さんとのんちゃんがしゃべってるところなんてたくさん見たことあるけど、私の家の前でこんな風になんて、本当に小学生以来なんじゃないかと思う。
あまり状況をよく飲み込めなくて、なにも言えずにその光景を見ていた。
「えっと、それで」
「ん？」
あの、ともう一度間を作ったのんちゃんが口を開く。
「大晦日…っていうか、年越した時、Aと初詣行ってもいいですか？」
「…それは、夜ってこと？」
「はい」
お母さんよりもずっと背が高いのんちゃんが、不安気にお母さんを見る。
やっとのんちゃんがお母さんに直接許可をもらおうとしてるんだって理解して、私がドキドキした。
「夜、やから……大丈夫かなって」
少し声が小さくなるのんちゃん。
なんだか私も不安になったけれど、「ええよ」とお母さんはあっさりと言った。
ぱっ、とのんちゃんが視線を上げる。
「まあ、人多いし大丈夫やと思うけど、一応遅い時間やから気をつけてね。はぐれても大変やし」
「はい、そこは！ちゃんと！」
「ほんならよろしくね」と言ったお母さんに「ありがとうございます」とのんちゃんがペコリとお辞儀をして、私も安心して小さく息を吐く。
「こちらこそわざわざありがとう」
そう言ったお母さんが、突然「のんちゃん今日お家でケーキとか食べる？」なんてのんちゃんを見た。
「どー…ですかね？出かけるって言ったから…」
「今ケーキあるんやけど、食べてく？」
「…え！良いんですか？」
「うん、のんちゃんが良ければぜひぜひ。ただお家でもケーキあったらアレやけど」
私抜きで進んでいる会話に、とりあえず「結局ケーキ買ったん？」なんて聞いてみる。
「うん、食べへんかったら明日食べればええかなって」
「お父さんは？」
「まだ帰ってへんよ」
どうすればいいのかわからずに焦る私と裏腹に、「食べる？」ともう一度聞いたお母さんに「はい！」とニコニコと答えたのんちゃん。
お母さんが大きく開けた扉から、二人で中に入る。
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りぃな - 最近花音さんの作品に出会い、いくつか読ませて頂きました。どれも時間を忘れて読み進めてしまうほど面白く、大好きです。制服黒髪小瀧くん、サイコーでした！まっすぐな重岡くんもすごくいい奴で、一年分のキュンキュンを味わった気がします 笑 (2020年10月9日 22時) (
レス) id: 6d972d4f2d (このIDを非表示/違反報告)
らっく。(プロフ) - もう完結してしばらく経ってしまっているので今さらのコメントです…。花音さんの作品、他にもいくつか読ませて頂きましたが、どの作品も描写が丁寧に書かれていて目の前に起こっている出来事のように思えます。「関野のおかげで楽しかった」のコメント狡いな〜っ (2018年11月29日 2時) (レス) id: 2be3d0728d (このIDを非表示/違反報告)
花音(プロフ) - まろんさん» 読みながら絵が浮かぶものを書けたらいいなと思っていたので、入り込んでくださったなんてすごく嬉しいです。素敵な感想ありがとうございました。これからも楽しんでいただけるようなものを書けるよう頑張ります。 (2017年6月4日 19時) (レス) id: 819da26d91 (このIDを非表示/違反報告)
まろん - 凄く文字が丁寧で読んでいてスっと入り込めたストーリーでした。私より年下の方がこんなにもいい小説を書いたのだと素晴らしいなって。主人公になって読んでみて入り込み過ぎてしまいました。これからも次回作楽しみにしております (2017年5月13日 15時) (レス) id: c7f87c9170 (このIDを非表示/違反報告)
花音(プロフ) - ちかさん» ありがとうございます。学生だからこそ、というような時間を楽しんでいただけたならなによりです。ファンだなんてもったいないお言葉をありがとうございます。彼の番外編は書くつもりなので、またお会いできたら嬉しいです！ (2017年4月29日 16時) (レス) id: 819da26d91 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：花音
| 作成日時：2017年3月27日 22時
