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＊
「大吾さーん…このレシートってどうやってかえるんでしたっけ？」
「A、そろそろ覚えや？」
正門さんが来てなんかちょっと気まずくなったあの日から、初めて今日シフトが被った大吾さんは慣れた手つきでレジカバーを開けた。
「うぅ…すいません」
「ちゃんとメモしときや。来月いっぱいで俺やめるし。誰も助けてくれへんで」
「もうやめちゃうんですか？」
「うん。卒論やばいし、卒業旅行も行きたいし」
「ふうん」
さみしいなって思ったけど、なんか素直にいえなくて、悟られないように素っ気ない返事をしてメモを取る。
「ちょっとは悲しめよ」
大吾さんは悪戯っぽく笑うとちらりと特徴的な八重歯が見える。
「店長送別会するとか言い出してうるさいねんけど」
「そりゃこの店の裏店長ですもんね、大吾さん」
「惜しまれて困るわ」
テキパキとレシートのロールをしまいながら、大吾さんは笑う。
わたしは大吾さんがいなくなってもここで働き続けるんやろうか…
もともとは正門さんを応援するために始めたバイトはもう目的を失って、ありがたいことに仕送りもあるから、やめたって困らないけど…
「そうですね。やっぱりちょっと…さみしいですね」
小さな声で呟きながら、自分のメモにぐりぐり意味のない円を描く。
「…」
返事がなくて顔をあげると、長い睫毛がぱちぱちと瞬きして不思議そうにわたしを見ていた。
「…もう、Aあがりちゃう？」
少しの沈黙の後、大吾さんは何事もなかったかのように時計に目をやると、ホールへ戻っていく。
大吾さん、自分のノート忘れていってる。
もうあと、何回かしか見ないのかもしれない背中に
『簡単にそういうことすんな』
この前、振り払われた指先の温度を思い出す。
自然に手が伸びてしまったけど、
浮ついた女って思われたのかな…
大吾さんの売上管理をしてるらしい、メモ帳にしては大きめのノート開くと、女のわたしより綺麗な字が並んでる。
別に、誰にだってするわけじゃない…のにな…
って…それじゃまるで…
もやもやを振り払うように、ノートを閉じて、テストで再印刷したレシートをちぎると、わたしはそっと日付を確認した。
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Bear(プロフ) - 最後に涙腺が崩壊しました。こんなに最高な作品にはしばらく会えなそうです (2021年12月14日 22時) (
レス) @page45 id: 3daf0f2645 (このIDを非表示/違反報告)
むたむた - どんでん返しに泣きました。夜通し読んじゃいました。ステキな作品をありがとうございます！！！ (2021年6月3日 4時) (レス) id: 738b505511 (このIDを非表示/違反報告)
林芽亜里 - 一気に完結まで読み尽してしました！！もう素晴らしすぎて(*´∇｀*)最初は、正門くんとハッピーエンドを迎えると思っていたけど、大吾くんと最終的に結ばれて、思ってもいない展開でビックリしました(^｡^)幸せな時間をありがとうございました(#^.^#) (2020年5月27日 22時) (レス) id: 9f77b0a91a (このIDを非表示/違反報告)
あおい(プロフ) - もう最高でした！！大好きなまさにしのお話ってだけでも嬉しかったのにこんな素敵なお話、もう最高すぎました！この作品の大ファンになりました！！楽しい時間をありがとう！また書く機会があったら楽しみにしてます！！ありがとうございました！！ (2020年4月26日 19時) (レス) id: db8a594314 (このIDを非表示/違反報告)
はつね(プロフ) - 初めは正門くんとエンド迎えるんかなって思ってたんですけど最後西畑くんと幸せになっててびっくりとよかったなって涙出ました！！ (2020年4月15日 23時) (レス) id: ee2a92e956 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：華音 | 作成日時：2019年5月16日 22時
