112＊Daigo Side ページ19
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さみしいなんて呟きながら俺を見上げるAを、またかわいいなって思ってしまった。
ほんまに困る。
春になったら物理的に離れられるから、耐えろ俺。
あと1ヶ月あまりのシフトも被らんように調整したし。
ラストまでのバイトを終えて、従業員入り口を出る。
夜の澄み切った空気が顔に当たって冷たい。
「大吾さん！おつかれさまです」
そんな静かな夜に似合わへん明るい声が聞こえて、腰を抜かしかけた。
「何してんの？！」
マフラーに埋もれたAがちょこんと立ってる。
「待ってたっていうか、帰ってもう一回来ました！」
「…忘れ物？」
ポケットにしまった店の鍵を触ると、
「これ大吾さんに渡そうと思って」
Aは小さな黒い紙袋を差し出す。
「何…これ？」
寒さでほんのり血色のよくなってるAの頬がゆるむ。
「ハッピーバースデー！大吾さん」
一歩俺に近づいたAからふんわりといい匂いがして、心臓がぎゅうっと音を立てる。
今日は1月9日。
俺の22歳の誕生日。
A、覚えてたん？
「ありが…とう」
驚きと舞い上がる感情が交差して、うまく言葉が出てこやん。
「誕生日やのに、ラストまでバイトでぼっちはかわいそうやなーって思って」
「…うるせー。Aも何だかんだ毎年ぼっちやんか」
「ちょ！ひどいです！笑えないやつ！」
「…ごめん、今のは悪かった」
ついムキになってしまったけど、Aは言葉とは裏腹に笑ってる。
「でもいつも大吾さんはちゃんとお祝いしてくれて嬉しいなって思ってますよ」
Aは下を向いて、鼻をすする。
「だからって別にね、お返しとかじゃないですよ」
「じゃぁ…何？」
「喜んでほしいなって思っただけです！」
Aがくしゃっと笑う。
なんなんそれ。ずるいわ。
ふわふわ揺れる髪を撫でそうになって、手を引っ込める。
期待したらあかん。そうやって一万回傷ついてきた。
「じゃぁ、それだけです！おやすみなさい！」
Aはくるっと背を向けてずんずん歩き出した。
ほらまた、風みたいに捕まえられへん…
「帰んの？」
引っ込めた手をもう一度伸ばして、Aの手首をコートの上から掴んだ。
「送ってくれますか？」
振り返ったAの笑顔は、やっぱりかわいくて、ああもう全然あかん。
「しゃぁなし」
「ありがとうございまーす」
無邪気に笑うAが愛しくて、俺は紙袋の紐をぎゅっと握りしめた。
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Bear(プロフ) - 最後に涙腺が崩壊しました。こんなに最高な作品にはしばらく会えなそうです (2021年12月14日 22時) (
レス) @page45 id: 3daf0f2645 (このIDを非表示/違反報告)
むたむた - どんでん返しに泣きました。夜通し読んじゃいました。ステキな作品をありがとうございます！！！ (2021年6月3日 4時) (レス) id: 738b505511 (このIDを非表示/違反報告)
林芽亜里 - 一気に完結まで読み尽してしました！！もう素晴らしすぎて(*´∇｀*)最初は、正門くんとハッピーエンドを迎えると思っていたけど、大吾くんと最終的に結ばれて、思ってもいない展開でビックリしました(^｡^)幸せな時間をありがとうございました(#^.^#) (2020年5月27日 22時) (レス) id: 9f77b0a91a (このIDを非表示/違反報告)
あおい(プロフ) - もう最高でした！！大好きなまさにしのお話ってだけでも嬉しかったのにこんな素敵なお話、もう最高すぎました！この作品の大ファンになりました！！楽しい時間をありがとう！また書く機会があったら楽しみにしてます！！ありがとうございました！！ (2020年4月26日 19時) (レス) id: db8a594314 (このIDを非表示/違反報告)
はつね(プロフ) - 初めは正門くんとエンド迎えるんかなって思ってたんですけど最後西畑くんと幸せになっててびっくりとよかったなって涙出ました！！ (2020年4月15日 23時) (レス) id: ee2a92e956 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：華音 | 作成日時：2019年5月16日 22時
