君へのSong (ページ49)

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前にもらった名刺を取り出して、大阪事務所の場所を確認すると難波だ。すごい偶然。

人混みを抜けて、早足で歩く。

あの後、有無を言わさず電話は切れて、一体なんなのか何も聞けなかった。

正門さんになんかあったんだろうか。

だとしてなんでわたしに連絡が来るんだろ。
保護者でもないし、恋人でもないのに。

事務所の前まで来たものの勝手に入っていいのかわからなくて、もう一度着信履歴を開いていると、

ガラス張りの扉が開いてパンツスーツを纏った彩月さんが出てきた。

その後ろに続くように、現れたのは…

「大吾さん…？」

わたしと目があった大吾さんは驚いたようにビクッと震えると彩月さんを見た。

なんで、大吾さんが彩月さんと一緒に…？

「どういう…ことですか？」

「あら、すごく早かったのね。Aさん」

彩月さんはコンっとヒールを響かせて立ち止まりわたしを見下ろした。

「緊急事態って…？っていうかなんで大吾さん？」

いろんなパニックで頭が回らない。

「彩月さんがA呼び出したんですか」

大吾さんが彩月さんを睨みつけた。

「そうよ。西畑さんは帰っていいわよ。今までご苦労様でした」

彩月さんは大吾さんに会釈すると、タブレットを取り出した。

「これはあなた？」

彩月さんがわたしに向き直り、タブレットの画面を見せてきた。

白黒の写真が数枚と下品な見出し。

切り取られたいくつかの写真の中で、あの日の公園の正門さんとわたしが、笑いあって、ギターを弾いて、キスしていた。

「来週発売の週刊誌に載るわ。一体誰に売られたの？」

彩月さんの淡々と、でも怒りに満ちた声が降ってくる。

「わか…りません…」

「否定しないのね」

「え…いや…」

否定しようもない。

紛れもない幸せだったあの日が、その脚色された白黒の中に晒されている。

「イベントに来なくなったと思ったら、こそこそこんなことして。だから言ったじゃない。正門さんのファンでいる分にはお客様だけれど、こんなもの出たら大迷惑よ」

飛んでくる言葉に言い返すこともできず、体が震える。

どうしよう。

正門さんになんて謝ろう。

謝ったって許されないし、今後の活動に影響したら…