ゆらり、ぐらり*1 ページ24
※閲覧注意な胸糞悪いお話です。
それでも宜しければどうぞ。
――
―
.
遠くで救急車のサイレンの音が聴こえる。
ぐらりと揺れた視界にはどろりと溶けた赤色と、唇をぎゅっと噛んでいる幼馴染の表情が映った。
ああ、もう、そんな顔しないでよ。何でそんなに悲しそうな顔をしてるの。
りぶは何も悪くないんだから、そんな顔しないでよ。
りぶがそんな顔をするなら、このことは全部なかったことにしてしまおう。
全部、全部、忘れてしまおう。思い出すことのないように。りぶがそんな顔をしなくて済むように。
――……ねえ。好きだよ、りぶ。大好き。
――……微かな機械音と、鼻につく消毒液の匂いでゆっくりと目を覚ました。
目を覚ました、とは言っても、視界は真っ暗なままだ。
何故か瞼が上がらない。重いわけではない。目が明かないのだ。
これはどういうことだろう。昨日までは何もなかったのに。
状況が分からず手を動かしていると、突然手をきつく握られた。
あまりに突然のことだったので驚いたけれど、ああ、私はこの手の温度を知っている。
「……りぶ?」
「A……起きたの?」
「起きた、よ? というか、その声はりぶだよね?
合ってるなら合ってるって言ってよ!」
「え、ごめん……合ってるよ」
「遅いよ……」
見なくても分かる、りぶが狼狽えている。
何というか、良い意味でも悪い意味でもこういうところは変わらない。
マイペースだ。昔からそうだから、私としてはこのマイペースさが当たり前になっているけれど。
「ねえりぶ、私どうなってるの?
目が明かないっていうか……何も見えないんだけど」
「……えっと、」
「ちょっと、なに? はっきり言って」
「……目は、明いてるんだよ。今も」
「え?」
「でも視点が定まってない。
……あのさ、こんなこと言うの、俺も嫌だけど。
――……A、失明したんだって」
「……え」
目は、明いている。それなのに何も見えない、明暗さえ分からない。
そしてりぶから告げられた、失明したらしい、という情報。
きっとこれは夢じゃない。私は夢を見ないタイプだし。
……もしもこれが夢なら、どんなに良いか。
もう見えない。何も見えない。
綺麗な景色も、家族の顔も、目の前の幼馴染がどんな表情をしているのかも。
……もう、何も。
「……しつ、めい」
「うん」
「そう……そっか……」
ただ譫言のように、その四文字を繰り返した。
19人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みなみ(プロフ) - いつ更新するんですか?紅組の方々がかわいそうです (2017年6月26日 19時) (レス) id: eac86c8ff6 (このIDを非表示/違反報告)
いっしー@アンチクロックワイズ(プロフ) - コメント失礼します! 吉采さん、あとがきの所、「いちよう」ではなく「一応」だと思いますよ! 細かい事ですみません。 (2017年5月11日 23時) (レス) id: 21ef9b6105 (このIDを非表示/違反報告)
めろんぱん@浮上率low(プロフ) - nuryaryaさん» コメントありがとうございます。すみません、参加者の間でもその話になりただいま修正中です。修正でき次第また更新とおしらせをさせていただきますのでもう暫くお待ちください! (2017年5月9日 20時) (レス) id: e64004afc3 (このIDを非表示/違反報告)
nuryarya(プロフ) - 文字が読みにくくて頭に入ってこないです。 (2017年5月9日 20時) (レス) id: 5fe90a8655 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ