【銀魂】 看守と囚人

痛み ページ10

１１４５は、物事を教えるのがうまかった。
・・というよりは、人を導くのがうまいというのだろうか。


彼の周りには次第に一人、また一人と人が集まって、獄門島内は二派にわかれることとなった。

１１４５に倣い、真面目に労働を行う者。
また、それに対する以前の獄門島の囚人の生活を未だに送る者。


また、私たち看守もそんな１１４５に魅了されるものは少なくなかった。





「おい、A」
「え、あ、はい」


しかし、その一方で１１４５をよく思わない看守も数少なくはなかった。


「お前、アイツに文字の手ほどきを習っているらしいな」
「な、なんでッ・・」

「そりゃあお前、孤児として何も学ぶことなくここに来たお前が本なんか読んでるとありゃ、誰だってわかる」


弧を描く看守の唇に、背筋が凍り付くようにゾワっとした。
今まで忘れかけていた記憶が、いっきにフラッシュバックする。


「お前は犯罪者のガキだ。いくら文字を覚えようが何しようが、ここから出られることはねェんだよ」


引かれた腕は、まっすぐと私の頬をめがけて飛んできて、痛みと共にぶつかった。
久しぶりに与えられた鈍い痛みと口の中に広がる血の味。






――犯罪者のガキ



ここに来た頃にはよくそう呼ばれていた。
看守からは煙たがられ、囚人たちからもたびたびからかいの的になった。

ただそれは、一時の物に過ぎず看守たちからの労働の押し付けや、囚人たちの言葉には次第に馴れていた。
最も、最近では１１４５の影響かそんな言葉も聞かなくなっていたが。



それでも鼻の奥がツーンとした。

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