目覚め ページ24
鼻を燻る良い紅茶のにおいで意識が覚醒する。
ゆっくりと瞼を開ける。
窓から差し込む光は淡く、寝起きの目には丁度いい。
少し動かしにくい体を起こし、辺りを確認する。
記憶にない部屋だ。枕の横の小さな台の上には俺の所持品と拳銃が置いてあった。
？「目が覚めたか？」
聞き覚えの無い男の声に反射的に拳銃を取り、構える。
？「初対面とはいえ、いきなり銃口を向けられるのは不愉快だな。」
そこにはほんのり湯気の漂う紅茶を持ち、エプロンを着けた白い髪に褐色肌の男がいた。
織「済まない。つい反射的に動いてしまった。」
？「裏で生きる人間には当たり前の行動だ。気にしてない。」
男は俺に、紅茶を差し出した。
？「飲めるか？」
織「ああ、有り難く頂く。」
普段飲むのはコーヒーだが、紅茶も嫌いではない。
紅茶を受け取り、一口飲む。
織「！……美味しい。」
紅茶の良い香りが口全体に広がり、すっきりとした味わいに目が冴えてきた。
仏教面の男の表情も、心なしか少し微笑んだ気がした。
？「体の外傷は全て治っている筈だが、どこか不具合はあるか？」
自分の身体を動かしながら確認すると、傷だらけだった身体は綺麗さっぱりと治っていた。
織「どこも問題ない。」
？「そうか、ならいい。」
男は寝台の脇にあった椅子を出し、座った。
織「お前は何者だ？俺は何故ここにいる？」
？「ああ、君からしたら初めましてか…。私は一度、君に自己紹介をした事があるが、改めて。
私の名は衛宮士郎。水無月の友人兼相棒だ。」
織「！お前が……だが姿が見えない筈だが？」
衛「それは私が見えないようにしていただけだ。
そして、此処は隔離された世界。
まぁ、異能空間とでも思えばいい。
君が此処にいるのは水無月が心肺停止した君を蘇生させ、私が運んだからだ。」
織「……理解が追い付かない。」
衛「まぁそうだろうな。本来なら君は死人だったが、私と違い生きている。
……此処の外はとても景色が良い。散歩をしながらゆっくりと整理してこい。」
そう言って、彼は空のティーカップを片付け、部屋から出て行った。
織「……外に行ってくるか。」
俺も、彼に続いて部屋を出て行った。
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作者名：神無月 | 作成日時：2018年7月8日 14時
