全てが終っていた ページ19
水無月「士郎、僕は良い人じゃない。気分屋で自分勝手で我儘な悪人だ。」
薄暗い森の中を進みながら、水無月は唐突に口を開いた。
水無月「僕は知っていた。この抗争の真実を。
知っていて彼らには何も言わなかった。」
暫く歩くと、古いボロボロの館が見えてきた。
入り口には無数の銃弾痕。
一人、二人と、ボロを纏った男たちが死んでいた。
水無月「僕には止める事が出来なかった。
だってこの人たちを救えるのは、織田作だけだったから。」
衛「私たちだけでも敵を殲滅することは可能だった。」
水無月「僕達じゃだめ。彼らの長は同じ異能を持つ彼を求めた。
僕たちが殺しても、君の様に何の信念もないただの亡霊に成り果て、
永遠に彷徨うだろう。
織田作の言葉だから意味がある。」
屋敷の中はもっと酷かった。
夥しい血の海が辺り一面に広がっていた。
彼女は迷う事なく、ロビーの階段を上がっていく。
水無月「ねぇ、君は神様を信じてる?」
衛「……ああ。」
水無月「どうして?存在しているのかも分らないモノを信じることが出来るの?」
衛「私は小さな神様に出会った。傲慢で欲深な神だったが、とても美しかった。」
水無月「良いなぁ。僕も神様に会ってみたい。」
彼女の最後の言葉はとても弱々しく、か細かった。
そして私たちは一つの大きな扉の前に辿り着いた。
水無月がゆっくりと開ける。
広い広い部屋の中央に、二人の男が倒れていた。
足を踏み出す。
水無月「人間の脳は心臓が停止した後、8時間は意識があるんだって。」
彼女はミミックの長には眼もくれず、真っ直ぐ織田作の元へ進む。
衛宮が織田作の元へ駆け寄り脈を確認する。
呼吸も心臓も停止していた。
だがあまりにも穏やかな顔だから、本当は生きているのでは?と疑ってしまう。
水無月が織田作の横に膝を付く。
水無月「ねぇ……聞こえてる?織田作。
死を受け入れた君には悪いけど、まだ死なせないよ。」
そして彼女は「異能力_____」と呟き、彼の身体を光る文字の羅列が包み込む。
衛宮の時とは違い、表情に笑顔は無く悲しそうな、少し怒りの混じった様な表情だった。
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作者名:神無月 | 作成日時:2018年7月8日 14時