相合傘(なんでもないです。) ページ12
あ〜。雨だ。
どうしよう。傘持ってきてないよ。
私の家は、会社から近いのでいつも歩いてきている。しかも今日のお天気お姉さん、曇りって言ってたから信じてたのに!お姉さんったら!もう!って言ってもしかたないよね……。
「浅野さん。」
ん?後ろを振り返ると、そこには神田君。まぁ、いわゆる私の後輩だ。この子はなんでもできる。この会社にはとても大切な人材だ。
「傘、無いんですか?」
『うん。持ってこなかった。』
そうですか。と、私の横に来て
「…もし良かったら、一緒に帰りませんか?」
と、神田君が紺色のシンプルな傘を(神田君らしいな)持ち上げて言う。
「その場合、相合傘になりますけどいいですよね。」
ちらっとこっちを見ながら傘を広げる。ま、濡れて帰るのよりはマシかな?家も同じ方向だし…(何度か一緒に帰ったことがある。)
『じゃ、お言葉に甘えて』
「はい。」
並んで歩き出す。いつもより近い距離に、神田君ってやっぱりイケメンだな。とか、横顔を見て思っていると(別に好きなわけじゃないよ。一般論でしょ?)突然、私の腰に手がまわされた。
『ちょっ!神田君!』
何をするか、と思いきや、ゆっくりと私を歩道側にエスコートしてくれた。(一瞬びっくりしちゃた)さりげない優しさってやつだね。こういう男子は好感度高いよ。うん。
「なんですか?」
『なんでもないです。』
雨がコンクリートと神田君の傘ににあたる音がする。湿度高いなぁ、髪が大変な事になっちゃうとか、考えていると
「浅野さんって、鈍いんですね。」
『はい?』
急に何を言い出したかと思ったら、「なんでもないです」って。ほんと、何考えてんだかわかんない子だ。
会社の話とか、世間話をしていたらあっという間に私の家だ。
『神田君、ありがとう。今度一緒に飲みに行こ』
「……わかりました」
家の玄関についてる屋根の下に入る。……あ、神田君の左の肩が濡れてる。私は濡れてないのに…
なんか、本当に申し訳ないことしちゃったと、今更になって思う。
『ごめんね。ありがとう。』
なぜ謝られたのか分からないとでも言うように、首を傾げながら、はい。と曖昧な返事をする。
『じゃ、また明日ね。』
「はい。浅野さん、また傘忘れてくださいね。」
何を言ってんだ、この子は。今日の神田君は意味不明だ。
「それでは、また。」
神田君の後ろ姿を見送る。これは、飲みだけじゃなくて、ちゃんとお礼もしないとな。
(浅野さんってホント鈍感。)
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ozだぁ〜 - もう、みんなかっこいいです!特に神田ユウ様っ!!また読み返します! (2021年4月29日 13時) (レス) id: 23f9dcf647 (このIDを非表示/違反報告)
鈴音(プロフ) - ホント久しぶりーー!!またよろしくねー(*´∀`) (2017年3月6日 22時) (レス) id: 01d6e1d1a3 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ - 桐宮さん» 初めまして!遊びに来て頂けてとても嬉しく思います!!面白いって言ってくれるなんて!!涙が出てきた!笑 これから再開しようと思うのでよろしくです!! (2016年12月28日 20時) (レス) id: d2295ce07c (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ - 鈴音さん» ひさしぶりー!!!!ずっと更新してなくてごめんー!!また再開しようと思うのでよろしくです!! (2016年12月28日 20時) (レス) id: d2295ce07c (このIDを非表示/違反報告)
桐宮 - 初めまして☆ 続きあるんですね?あ、脅しじゃないですよ。これ面白いから、続き読みたいなー。なーんて思ったわけですよっ☆ 頑張って下さい! (2016年12月1日 2時) (レス) id: a7d473c89c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆちろ | 作成日時:2015年3月18日 17時