第二十四曲目 ページ32
『あ。』
「ん〜?どしたぁ?」
私の作った親子丼を口にたくさん含んでハムスターみたいに食べてるつっきーは可愛いけど、今はそんな場合じゃない。
『集合場所、分からないんだった……!』
つっきーが来て忘れてた。どうしよう……どうしよう。
「んむ……なんかあった?」
『えっと、友達と待ち合わせするんだけど、詳しい場所が分からなくて……。』
「聞けないの?」
食べ終わったのか、つっきーは箸をおいた。
『深夜だから、迷惑かなって……。』
「あ〜……待って、普通にラインで聞けばいいんじゃ?」
……確かに。
「あはは、彩、天然。でも、優しいねぇ。」
その優しさをまふくんにも分けてほしいよ、とつっきーが呟いた時、私のではないスマホが光る。当然、つっきーのなわけで。
「うわ、まふくんだ。」
『うわって……。』
「いや、俺には分かるんだよ。絶対碌な案件じゃない。」
えぇ……いいのか、それで。
『出てあげなよ。』
「……まぁ、彩が言うなら。」
そんなに嫌なのか。
「もしも」
「あまちゃん!!!!!!」
「うるさっ。」
つっきー辛辣だなぁ……珍しい。でも、仕方ないか。
「今から家行っていい!?!?」
「うるさいよ、ダメ、うるさい。」
大事なことだから二回言ったんだね、分かるよ。
「なんで!!!!!!」
「だからうるさい。今留守だから。」
「どこいるの?」
あ、声落ち着いた。
「動画撮ってる?」
「撮ってる〜。配信中。」
なるほど。これ、企画だったんだね。
まふまふさんのTwitterから、配信を開く。
そういえば、深夜に突然電話する配信、私も見たことあるような……。
「いろちゃんの家。」
ちょ!言わないでよつっきー!炎上する!!
いや、言わないでばれる方が炎上するのか……?どうなんだろ。
でももう後の祭りだ、腹をくくろう。
忍に何とかしてもらおうかな、でもあんまり頼りすぎるのは……。
ぐるぐると私が考えていると、頭に何かが乗っかる。
見上げると、つっきーの手が私の頭に乗っかっている。
優しい目は“大丈夫”と言っている様で。
おそるおそる画面を見てみると、コメントはたくさん流れるけど、好意的なものが多かった。
ふっと肩の力が抜ける。
「切っていい?」
「え!?ねぇちょっと、僕もそっちに」
電話と配信が同時に切れて、数分ほどしか経ってないうちにインターホンが鳴った。
「扉、開けなくていいからね。」
その言葉に、思わず笑ってしまった。
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