番外 お姫様と騎士様 ページ43
「さて…Please tell me the name.私に名前を教えてくれませんか?」
侍女に頼んで風呂に入らせ治療もさせて。
髪も梳いて可愛らしい着物を着せる。
ほら、一等のお姫様の完成だ。
しかし、少女はいくら話しかけても無反応。
『イス』に座って『窓』から見える港をじっと見ていた。
いきなりは無理ですかね…
ふっ、とため息をついて、私は少女にあてがった部屋を後にした。
•
少女は1日、そこを動かなかった。
港に視線を向けたまま。
ただ、時折何かに怯えるような目で扉の方を見る。
それは2時間ごとくらいに繰り返されていた。
…言わずともわかる。
この国は、同じ人間に対してこのような仕打ちをするのか。
いや、少女は人ではない。それでも、同じ見目姿をした幼い少女だというのに。
「お姫様…。ここには貴方を傷つける人はいませんよ。安心して。夕食にしましょう?」
すっ、と瞳が私の目を捉えた。
弱々しく口が動く。
「…なんの、じっけん……?」
でてきた言葉に意表を突かれつつも、私はしゃがみこんで言い聞かせた。
「実験ではありません。貴方は私に保護された。もう苦しむ事はないのですよ。」
「ほご……?」
少女はいつから、あの薄暗い地下牢にいたのだろうか。
言葉もままならぬほどに幼い頃からとしか思えないが。
この様子では家族もいまい。
おそらく、名前も…。
「今日から貴方は、この家の者ですよ。人間の暮らしを、しましょうお姫様」
「人間……」
少女、お姫様の顔が歪むのを垣間見た。
人間と呼ばれなかったお姫様には、人間は憎むべき対象かもしれない。
けれど、私が、こんなからっぽの私がお姫様に教えられるのは、人間の形だけだった。
その夜、お姫様は初めて『食事』を覚えた。
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桜華(プロフ) - 壱月のてふさん» ありがとうございます!! (2019年6月16日 23時) (レス) id: 98b8c85960 (このIDを非表示/違反報告)
壱月のてふ(プロフ) - 今後、薄桜鬼ではないかもしれませんが、また新しい作品を書いていく予定ですので、どうぞよろしくお願いします! (2019年6月16日 17時) (レス) id: d5fc3d3395 (このIDを非表示/違反報告)
壱月のてふ(プロフ) - 桜華さん» 初めまして!返信が遅れてしまってすみませんm(_ _)mコメントありがとうございます!凄く嬉しいです!桜華様の言うとおり、読みは「ゆきな」です!「十鬼の絆」という薄桜鬼の過去の話のヒロインの名前からとらせて頂きました。 (2019年6月16日 17時) (レス) id: d5fc3d3395 (このIDを非表示/違反報告)
桜華(プロフ) - 結構前の作品にコメントしてしまってごめんなさい!もうほんとに感動しましたー!素敵な作品をありがとうございます!!ところで、夢主ちゃんの本当のお名前って「ゆきな」と読むのでしょうか…?2年も経っているのでお返事来ないと思いますが、待ってます…! (2019年2月11日 0時) (レス) id: 98b8c85960 (このIDを非表示/違反報告)
睦月(プロフ) - いずみんさん» 読んでいただけて嬉しいです!どんどん更新していきますね! (2017年8月15日 12時) (レス) id: 967e483124 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:睦月 | 作成日時:2017年5月21日 19時