その86 ページ27
綱道「羅刹達よ、彼らを追いなさい」
「させないよ」
いつの間に現れた羅刹達を、黒髪で射ていく。
力を使うたびに意識はどんどん引きずり込まれていく。
お願いだから八千代。あと少し、もう少し力を貸して。
そしたら、全て終わるから。
・
「左之さん!!放せって!一人で歩ける!!」
黙ってオレを抱えたまま走る左之さんをたたく。
でも、そんなことお構いなしに左之さん達は下へ下へと降りていく。
「っ、紅は!?紅を置いていくのか!?頼むから、待っ…」
左之「うるせぇ!!!!」
怒鳴り声に、びくっと体が反応してしまう。
その声は、あの日と同じ。不器用な左之さんの、心配とか優しさの形。
分かってる、けど。分かってるつもりだけど。
左之「あの日、俺達もあの場にいた。なのに!お前を死なせて、辛い思いをさせちまって。俺達は、これ以上平助を苦しませたくねぇんだよ!」
「そんな…こと…」
左之「こんなの自己満足だってのは百も承知なんだ。けど、よ。紅の気持ち分かるんだ。お前を死なせたくねぇっ、て。」
新八「女に頼るなんて情けねえけどよ。あいつが、紅が、それを一番望んでるんだ。」
望んでる?紅が?
オレはもう死んでしまうのに。命の灯は消えかかってるのに。
「ありがとう…。左之さん達が言ってくれたこと、すげー嬉しい。」
左之さんもしんぱっつぁんも、こんなオレのこと、思っててくれたんだっ、て。
「でもオレは、さ、最後まであいつのそばにいるっ、て決めたから…だから……」
言いよどむと、左之さんは急に立ち止まり、地に足がついた。
左之「ちゃんと言え。紅と、どうしたいんだ?」
ぐっ、と息をつまらせて、口を開く。
まだ紅にも言ってない、どうしようもないオレの我儘な夢だけど…叶わないとは思うけど…
「紅と二人で、生きて、添い遂げたいんだよっ!」
頬が熱くなるのを感じる。
すげぇ恥ずかしい。ばかにするんじゃっ、て思ったけど
左之さん達はいつもみたいに笑って、肩を押してくれた。
左之「その思い、きちんと紅に伝えてこい。」
新八「男は惚れた女に尽くすのが大義だからな!」
「左之さん…しんぱっつぁん…」
ふと脳裏をよぎるあの日々。
三人で馬鹿して、でも、とても楽しかった日々。
なんとなく、ここで別れたらもう会えない気もする。
それでもオレは、紅をとる。
千鶴「平助くん、あの、父様のこと…」
「ああ。任せとけ。」
二人共、背中を押してくれてありがとう
そして
さよなら
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桜華(プロフ) - 壱月のてふさん» ありがとうございます!! (2019年6月16日 23時) (レス) id: 98b8c85960 (このIDを非表示/違反報告)
壱月のてふ(プロフ) - 今後、薄桜鬼ではないかもしれませんが、また新しい作品を書いていく予定ですので、どうぞよろしくお願いします! (2019年6月16日 17時) (レス) id: d5fc3d3395 (このIDを非表示/違反報告)
壱月のてふ(プロフ) - 桜華さん» 初めまして!返信が遅れてしまってすみませんm(_ _)mコメントありがとうございます!凄く嬉しいです!桜華様の言うとおり、読みは「ゆきな」です!「十鬼の絆」という薄桜鬼の過去の話のヒロインの名前からとらせて頂きました。 (2019年6月16日 17時) (レス) id: d5fc3d3395 (このIDを非表示/違反報告)
桜華(プロフ) - 結構前の作品にコメントしてしまってごめんなさい!もうほんとに感動しましたー!素敵な作品をありがとうございます!!ところで、夢主ちゃんの本当のお名前って「ゆきな」と読むのでしょうか…?2年も経っているのでお返事来ないと思いますが、待ってます…! (2019年2月11日 0時) (レス) id: 98b8c85960 (このIDを非表示/違反報告)
睦月(プロフ) - いずみんさん» 読んでいただけて嬉しいです!どんどん更新していきますね! (2017年8月15日 12時) (レス) id: 967e483124 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:睦月 | 作成日時:2017年5月21日 19時