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第49輪 ページ4

「友ではなく、従者となったか」

秀吉も同じ事を思い返していたらしい。

「…あの時言った、よい、は宵君の事だったんだね。…彼女は覚えているのかな?」
「三成も変わった。"佐吉"と言わねば分からぬだろう」
「そうだね。…大鎌も居合刀も使えて、翼も…となれば…。彼女はもう無双だろうね。強くなったよ」
「…三成が二人に増えたようなもの…」

前線の惨状を見つつ、秀吉が小さく呟いた。
半兵衛は思わず吹き出す。

「!?…ふっ、ふふ…。いや、すまないね、秀吉。君の発言が的確でね」

半兵衛もつられるように前線へ目を向けた。

「二人は攻撃の息も合っている。友人ではないけれど、仲良くなれそうだ」

​────​────

「また逃げるのか、イエヤスウゥッ!」

三成は空へ向かって​─正確には飛び去る家康へ向かって─そう吼えた。
機械じみた者とそれに乗る男に驚愕の目を向けていた菊夜はのんびりと言う。

「あれが噂の家康さんなんですね〜」
「噂の…?貴様、旅をしていたのではなかったか」
「江戸や三河の方へは行っていないんです。宵の調べで銀髪の翠眼はいなさそうだと分かっていたので」
「フン、命拾いしたな。寄っていれば斬るところだった」

三成は苛々と刀身を鞘に叩きつけるように納刀した。

「殺気立ってますね…。私でよければ、ぶつけて下さっても構いませんよ?」
「妙なことを。私の刃は速い、配下を斬るほど苛立っている訳では無い」
「…避けれますよ。噂に聞く恐惶でなければですが」

菊夜は丁寧に納刀し、大鎌の刃に覆いをかける。
ふと、三成はそこへ斬りこんでみた。
見えていない左側からの、完璧な不意打ちだったはずだ。
キン…ッ
菊夜は予知していたかのように、刀を鞘から半分抜いてそれを防ぐ。

「…完全に死角だった筈だが」
「貴方様の斬撃はこの戦の間、見てきたんです。刃を抜く音も、右足を踏み込む時の音も分かっていますもの」
「音でどうにかなるのか」
「はい。左側は音と気配で視覚を補ってるんです」
「…ほう。興が湧いた、少し試すぞ」

「…何をしてるんだ、あれは」
「さてなァ。われに聞くな」

終わった戦場で主従が試合をしている。
刑部と宵が見たのはそんな光景だった。
呆れ声で狼は零す。

「全く、何を遊んでるんだお前は」
「遊んでないわよ。…三成様はやっぱり速いわ。私、反撃できないもの」
「しようとしてないだけだろ。戻るぞ」
「防ぐのと避けるので手一杯よ。それより貴方は何してたの?」

宵が声をかけ、斬り合いを終わらせた。

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作者名:かきくけ子 | 作成日時:2020年8月18日 2時

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