第４８輪 ページ3
豊臣と徳川の戦もあり、現在、日ノ本は大きな戦乱の渦中にある。
当然、大なり小なりの戦はほぼ毎日ある。
本陣で全体指揮を執っている半兵衛は、手が空くと秀吉に話しかける。
「ねぇ秀吉。菊夜君、すっかり見違えて帰って来たね」
「あやつは、幼くして初めて手にした薙刀と発達途中の脆い翼で戦況を逆転させた奴だった」
秀吉は前を見据える。
視線の先には翼を展開し、空から意のままに殺戮する菊夜がいる。
「…お前に懐いていた」
「君にもだよ。彼女が城へ来たのは数度だけど、君の膝の上が定位置だったじゃないか」
答えながら、半兵衛は記憶にある幼少の頃の菊夜を思い返す。
────────
「彼は佐吉くん。仲良くしてやってくれるかい？」
「この子は菊夜ですわ」
「わたし、きくや！あなた、さきちくんね？…おともだちになろうよ！」
「きくやと言うのか。仲よくしてやってもいい！」
「…念の為、薙刀を持っているのですわ、菊夜。今日の戦は荒れますの。…本陣から出ちゃダメですわよ」
「危ないからね。お母さんの言いつけは守れるよね、菊夜」
「う、うん…？」
「ひでよし様！今の、うちじに、って…！？」
「…戦って、死ぬ事よ」
「それ本当ですかっ！？…っ、いかないと…！」
「待て。貴様は父から本陣にて待機と…！」
「…はんべえ様…」
「菊夜君！探したんだよ。無事だっ──っ、血まみれじゃないか！」
「…だって、…」
「け、怪我はないかい？とりあえず裏に行こうか。おいで」
「…うちじに、って、ホントだったんだって…。さがしても、いなくて…！ぶきしかなくて、どこにもいなくて…っ！うわぁぁぁん！」
「どこも怪我をしていないんだね。…良かったよ…」
「ごめんなさい、はんべえ様。わたし、たくさん、人を…！」
「それが戦だよ。君一人でやったのかい？」
「父さんと母さんのぶき、持っている人見て…、あたまが真っ白になったの。…っ、父さんと母さんを、返してって思って、……。気付いたら、みんな動かなくて…！」
「お水だよ。飲みたまえ。…落ち着いたかい？」
「…はい。だいじょーぶです。…はんべえ様。父さんの刀と母さんのおおがま、もらってもいい？」
「どこかへ行くつもりなんだね？」
「父さんが言ったの。お前はあるじをさがして旅をしなさい、て」
「旅へ出るんだね？」
「強くならなきゃ。わたしが弱いから、二人ともいなくなっちゃったの。家でよいが待ってるからいっしょに…」
「佐吉くんに挨拶はしないのかい？」
「……。はい。…おともだちになりたかったなぁ」
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作者名：かきくけ子 | 作成日時：2020年8月18日 2時
