水汲み2 ページ17
「お水冷たいね。」
アオイは湧き水に指を入れて俺とカズを見た。
カズは「そうだろー!」と言いながら笑って、ポリタンクやペットボトルを車から降ろしはじめた。
俺は湧き水をペットボトルに汲みキャップを閉めてカズを見る。
「カズ、俺ちょっと。」
「おう!アオイちゃんは任せろ!」
俺は水汲みの他に、この山で採れる木の実や花を摘んで持ち帰って、布の染料として利用している。
祖父から教わった機織りだが、天然の染料を作り布を染めるのが祖父の1番のこだわりでこれだけは譲れないと、俺が小さいころから厳しく指導された。
小さく「お兄さんどこ行くの?」というアオイの声が聞こえたが、カズが説明してくれるだろうと思い、振り返らず俺は山の奥へと歩いた。
祖父は凄腕の機織り師で毎日ものすごく集中して機織りをしていた姿は今でもよく覚えている。
確かな経験と実力がある祖父の指導はとても厳しく、後継を探していたがなかなか厳しい指導を耐え抜く者はおらず、祖父の息子である俺の父は不器用でどうにもならなかったらしい。
そんなことは何も知らず機織りへの興味だけで祖父の指導を受けていた幼少期の頃を思い出しながら染料の材料を摘むことにした。
一通り木の実や花を摘み終えてカズたちのところへ戻るとアオイとカズは冷たい湧き水に足を入れて休んでいたようだった。
「遅くなって悪い。なんか元気ないな…どうした?」
「A〜!ごめん、俺アオイちゃんの機嫌損ねちゃったかもしれねぇ!!」
カズはどうしようと困った様子で何度も「アオイちゃんごめんな?」とアオイの顔を覗き込んで謝っていた。アオイはその度に「大丈夫」と言っている。
あんなに元気だったアオイが孤児院にいた頃のように暗い表情をして俯いている。
なんだかよく分からないが、きっとカズが2人きりの場を盛り上げようとして変な話題でも振ったのだろう。
「とりあえず疲れたし、汗もかいただろ。家に戻って休もう。アオイもそれでいいか?」
俺がそう言うとアオイは「うん」と小さく呟いて立ち上がった。
カズが足を拭く用のタオルを差し出すと「ありがとう」と言って受け取り、静かに足を拭き始めた。
どうやら喧嘩したという訳では無さそうだ。
家に帰ってからマノンやヒナも混じえて話した方がいいだろう。
荷物を積み込み、車に乗り込むとアオイはそっと窓の外を見ていた。
カズが運転する今日の帰り道はあまりに静かだったので、ふとアオイを見ると疲れたようで子供らしくぐっすりと眠っていた。
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白詰草 - コメントありがとうございます!!多忙なもので更新が遅くて申し訳ないです。スキマ時間で書いていきますので気長にお待ちいただければと思います! (2020年11月30日 16時) (レス) id: faba208d06 (このIDを非表示/違反報告)
ユメ@うぇーい教おいしい美茶教(プロフ) - 初めまして…!題名に少しつられてのこのこやってきた者です!オリジナルなので、原作なども読まなくて良いし、どんどん引き込まれます…!ゆっくり更新でも良いので、更新、頑張ってください…! (2020年11月29日 6時) (レス) id: e02f1d7237 (このIDを非表示/違反報告)
白詰草(プロフ) - コメントありがとうございます!!超スローペースで申し訳ないです。また読みに来て頂けたら嬉しいです! (2019年12月14日 1時) (レス) id: faba208d06 (このIDを非表示/違反報告)
みるくプリン(プロフ) - はじめまして!続きが気になって一気読みしました。これからも頑張って下さいっ(*^^*) (2019年12月10日 2時) (レス) id: 7db76bcf0c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白詰草 | 作成日時:2019年4月18日 1時