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『あれがペテルギウス。そこから斜め左下にいったあれがプロキオン』
白い息が昇っては消える。澄み切った空に浮かぶ星に指を伸ばしてなぞっていくと「うん」と私を後ろから抱き抱えている彼が相槌を打ってる声が聞こえるだけで本当に私の話を聞いているかはわからない
公園よりだったら丘に行って星を見たいを言うとまたこれも二つ返事で誰もいないここへ連れてこられた
「ここに来るならもう少し厚着してくればよかったね」
『私は寒くないよヒロ君あったかいから。ヒロ君寒い?帰る?』
「俺も寒くない。Aさんあったかいから」
『強がらなくて良いのに』
「強がってない。で、あの星は?」
私の手を握って星を指させる。話を逸らしたな、とほくそ笑みながらその星をみる。ペテルギウスのほぼ真下
『あれはシリウス。この三つを繋げると三角形になるでしょ。これが冬の大三角だよ』
小学生で習う内容を期末テスト前の高校生に丁寧に教える。日本の小学校に行っていれば誰だって習うものだし誰だって知ってるはずのものだ。だけどこの冬の大三角形を大人になってまで覚えている確率は何%だろう。
実際に見てあれがペテルギウスとかプロキオンとかシリウスだと律儀に覚えている人間は全体のうちどれくらいだろうか
そう言うものだ。大人になって実際に使う知識なんてほんの僅かで大抵は忘れても生活に支障ないものばかり。一生懸命に憶えたところで数年後には思い出すこともない
なんて時間の無駄なのだろう。まるで私たちデビルハンターのようだ
人はいつか必ず死ぬ
なのにどうしてわざわざ助ける必要があるのだろうか。
守ったところでその人の未来は決まっているのにどうして命をかけてまで悪魔を狩らないといけないんだろうか
『私たちが今見てる星はさ、数年前のとか何百年前の光なんだって』
「へぇ、そんなに前なんだ」
『そう。だからねあの星もこの星も本当はもう無くなっちゃってるかもしれないの。でもそんなこと誰にもわからない。死んで消えたところを誰にも見られないまま…無くなっていく』
これが本当にデートだったらもう2度と相手から連絡は来ないだろう。重い話をしている自覚はある。だけどたまに否頻繁にこう言うことを考えてしまうことがある。それも職業病なのだろうか
違うかな。きっと私だからだ
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作者名:要 | 作成日時:2022年12月7日 17時