第89話 ページ46
Aside
冴子姉さんのものすごい運転に圧倒されながら、東京に向かう高速を走っていた。
ようやく落ち着いて、バレーやメンバーの話しをしている最中、あまり話した事がない影山君から声を掛けられた。
影「あの…夜月先輩。」
『…何です?』
影山君は何か少し考えてから話し始めた。
影「前にコイツと外で練習してた時にたまたま通りかかった夜月先輩の方に飛んでいったボールなんスけど…」
私はいつの事かと思い出していた。
そういえば、渡り廊下を歩いていた時に飛んできたボールを打ち返した事があったな。
影「あの時、夜月先輩はボールを見ずに平然と打ち返しましたよね。普通の人じゃ取れないようなボールを。」
私にとってあの程度のボールを打ち返すことは造作もないことだった。
普通の人は、できないことか…
日「結構なスピード出ていましたけど、あれ取れるってスゲーと思います。バレーやってたんスか?」
『スポーツは…何もやっていない。』
日「え!?じゃあ…」
『たまたま、よ。』
きっと二人が納得する答えじゃなかったはず。
今話すことではない。いずれ分かるであろう、私の事。
影「……そう、スか…」
バックミラー越しに見れば納得してなさそうな顔。
『昔から反射神経はいいのよ。何かの気配とかに敏感でね。』
日「誰かが近づいたり、物が飛んできたりするのが分かるんですか?」
『…そうね。』
日「へぇ〜すっげぇ!!そんな事ができれば、試合でもボールの飛んでくる所にサッと行けるな!な、影山!」
影「…おぅ。」
冴「反射神経がいいならスポーツやろうと思わなかったの?」
私には他の事に手を出す余裕なんてなかった。
もっと他に、極めなければいけない事があったから。
『全く。』
日「勿体ないっス!」
冴「ま!人それぞれだからね。」
なんだかんだ冴子姉さんは察してくれるのか、余計な事を言ったりしない。
影山君の視線を感じながらも色々な話をしているうちに景色は次第にビルに囲まれ、いつの間にか東京に着いていた。
ビルの隙間から見える夕焼けは、また少し違って見えた。
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作者名:極東華梛魏 | 作成日時:2021年8月2日 20時