274話* かぞくのこと。6* ページ37
次に目を覚ました時、僕の記憶に「家族」の記憶はなかった。
その代わりに今まで散々「親父」にいたぶられてきた、いじめられてきた、それだけの記憶が流れてきていた。
「父さん」とは全く違う、なんの取り柄もない「親父」の記憶だけがそこにあった。
そこで前菊丸に話したように散々な扱いを受けた。
人間ではないかのような扱い。
予想でしかないんだけど、あそこは独立した完全な別世界なんだと思う。
だから父さんも強制的にトリップさせる時、どんな人の所にいくのかは選べなかったんだと思う。
それから散々な生活を一年した頃、
兄さんと向こうの世界で出会って。
それでトリップの方法を教えてもらって。
……この世界にやってきた。
この世界が生まれた世界と、散々な思いをした世界と、同じなのか別なのかよくわからないけど。
けどきっと兄さんや父さんは私があんなに不甲斐ないからきっと天国に行けないんだろなって記憶思い出して、ようやく分かった。
だけど記憶を失くしたままでも本気を出した試合は完全勝利じゃないと怖くて怖くて仕方なくて、
だから丸井に一ポイント取られた時、すごく恐怖が襲ってきて……
それで、あんなことになって。
……だから、明日は三人のお墓に行こうと思って。
色々、謝りに。
」
僕のその言葉で再び静寂が訪れた。
長かったから菊丸は寝たかな、なんて思ってそのまま僕も目を閉じた。
菊丸「……Aのお父さんとお兄さんってさ、」
菊丸の口から恐る恐るというように二つの名前があげられた。
驚いてバッとふすまの方を見る。
A「……何で、菊丸、その、名前……。」
菊丸の口から出た名前は間違いなく僕の父と兄のもので。
菊丸「じゃぁ、Aはこの世界の人だよ。……おかえり。」
その言葉に全ての気持ちが見透かされたようで。
A「……ただいま。」
小さくその言葉を呟いて僕は深く布団をかぶった。
一つ、重い荷物が降りたようで。
途端に眠気が襲ってきて、
そのまま僕は深い眠りについた。
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玲 - まるでその場に自分がいるかのようにのめり込むことができました!とてもいい作品をありがとうございます!長文失礼しました。 (2018年8月13日 19時) (レス) id: 898fb0a605 (このIDを非表示/違反報告)
玲 - もう…すごいとしかいえません。これほどの出来の長編を完結させるとは…!描写もすごくわかりやすいし、とてもよく考えて書かれたものなんだなってわかりました。読みながら主人公に共感したり、いろんなキャラに、いい奴だな、とか、かわいいなって思ったり… (2018年8月13日 19時) (レス) id: 898fb0a605 (このIDを非表示/違反報告)
月夜見(プロフ) - 出雲流夏さん» コメント有難うございます。更新が遅くなり申し訳ございません。話の展開の予想外さ、文章や言葉はその時々の流れや雰囲気により使い分けを意識しているのでそう言って頂けてとても嬉しいです。またお時間のあるときにでも読んで頂ければ幸いです。 (2017年5月9日 23時) (レス) id: 147be326d2 (このIDを非表示/違反報告)
出雲流夏(プロフ) - 更新されていて、すごく見れることが嬉しかったです。月夜見さんの文章や言葉はキレイだと思います。私のような素人でもスッキリと頭の中に入ってきて、話の展開がよめなくて、キャラそれぞれが際立っていて、凄いと見ていて思いました。更新楽しみにしてます。 (2017年5月8日 16時) (レス) id: 3483900707 (このIDを非表示/違反報告)
月夜見(プロフ) - るりなさん» 待っていて下さった事にまず嬉しくてニヤケが止まりません……!!これから更新はできるだけ週2、3ぐらいで続けたいと思います笑 ありがとうございます!ただいまです! (2016年12月6日 1時) (レス) id: 147be326d2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月夜見 | 作成日時:2015年5月10日 15時