ヒロインなんて、なりたくない。６

132話 ページ7

部屋に立て掛けてある全身鏡に写る自分が少し大人っぽく見えるのは、気のせいなのかな。


　童顔がもともとコンプレックスな私は、学校ではメイクをして少し誤魔化すけど、隠しきれない子供っぽさがあるんだと思う。

　菜穂に、よく言われるんだ。


　でも今日の浴衣姿の私は、いつもよりメイクを濃くしている。

　濃いアイシャドウを重ねた瞼、睫毛に丁寧に塗られたブラックのマスカラ、真っ赤に染まった唇。

　大人に少し近づいた無意識にニヤけてしまうから、気を引き締めるように顔に力をいれた。




「今日、菜穂は結ばれるのかあ…」




　少しでも大人っぽくなりたくて菜穂と一緒に選んでみた浴衣は、紺地に大きくて華やかな向日葵が咲く大胆なもの。帯も赤に近いピンクで、喜んで買ったんだけど…。

　似合ってるの、かな。

　菜穂は家にあると言って買わなかったけど、お嬢様だからきっと部屋が埋まるくらいの浴衣があって、そこから選び放題なんだろうなあとか思ってしまう。

　そうしたら、元々大人っぽい菜穂は私のような浴衣を選んだとして、眩しいくらい美しくて似合うよね。美人が際立つと思う。

　そしたら私、浮く？




「ふ、不安になってきた…！！」




　メイク落とした方がいい！？

　薄めにして直す！？

　浴衣も、帯だけでも変えてみる！？


　ふと壁掛けの時計を見ると、集合の時間まであと20分程。

　近所で行われるとはいえ、時間前に着いておくことに越したことはないので諦めのため息をついた。

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