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yt.
彼の声に振り向けば、その樹は確かに淡く発光していた。
「やぁ、本当だ」
良かった。俺達は運がいい。
「コータくん達上を見てごらん」
「え?」
見上げた二人が「うわぁ…!」と歓声を上げる。
「しー。静かに」
彼らは繊細な生き物。驚かせてはいけない。
そう言うと慌てて口を押さえる二人に小さく笑い、見上げた。
満月の光を浴びながら、七色に光る魚たちが中空を舞う。
流線形のしなやかな魚体をくねらせ、長く伸びる尾鰭を揺らし。
天に向かい伸びる樹の幹から幹へ、鮮やかに跳躍してゆく。
「大ちゃん!!」
彼らに向かい、大声を出した俺に二人がギョッとする。
「大ちゃんいたら此処に来て!!」
好き好きの樹に吸い込まれてゆくゲツエイ達の中に、一際目立つ鱗の輝きが翻る。
「待って!大ちゃん!!!」
「あいつ?!」
「任せてユートくん!」
走り出した俺より二人の方が早かった。
「コータ!」
「おう!」
一匹のゲツエイ目掛けジャンプを繰り出すコータくん。驚いたゲツエイが樹の中に吸い込まれる前に、続いたリョースケが尾鰭を捉えてぐいっ!と引っ張った。
ビチビチビチビチッ!
『痛いいたい!ちょっとー!!』
「「ぅわーっ!!」」
お腹の辺りまで樹の中に突っ込んだ魚体が跳ね回った勢いで、二人が吹っ飛ばされた。
「リョースケそいつ逃げる!」
「させるか!」
いやあの君たち?
「こらこら乱暴にしたら…」
『なっにすんだこらー!!!』
スポンッ!と(実際はそんな音しないけどね)樹から抜けたゲツエイは激オコ。
「「しゃべった!!」」
「うん、話せるんだよ、ゲツエイは」
『ユート、子供のシツケはちゃんとやって!!』
空中に停止し、プンスコしてる
「ゴメンゴメン大ちゃん。緊急なんだ、すまないが鱗を分けてはくれまいか」
『へぇ?ユートからとは珍しいね。てゆーかアレらユートの子?いつ
すげぇすげぇと大興奮の二人に、容易に襲われない距離を保つ彼が、頭を傾げる。
誤解も甚だしいけどそれは後だ。
「それより大ちゃん、実はケイが」
『え?』
皆まで聞かず、くるりと一回転した瞬間、可愛い男の子が地に降り立つ。
「「ぇえええ!!」」
『ちょ、うるさっ』
えーと…。
どこから回収しよう?
.
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夏夢(プロフ) - 黄色いうさぎさん» 黄色いうさぎさまはじめまして☺️わぁ、何度も読んで頂いてるんですね☺️ぉ、おおぅ旗部屋リピートも(恥(/▽\)キャッ)💦こちらこそありがとうございます😆励みになります💕 (2022年9月14日 12時) (レス) id: 5f3d433f1b (このIDを非表示/違反報告)
黄色いうさぎ(プロフ) - こんばんは、始めまして夏夢さん。夏夢さんの作品を定期的に読み直しています。回路…や尾行シリーズも好きです。旗部屋も😁どれも素敵なお話達、やさぐれた私の心を癒やしてもらってます。ありがとうございます (2022年9月13日 22時) (レス) id: ef1652ec47 (このIDを非表示/違反報告)
夏夢(プロフ) - ちぃちゃんさん» ちぃちゃんさま、拙話を寛ぎのお供にだなんて、恐縮でございます😆ありがとうございます(照)💕子狼くん、またお目見えしました時は遊びにきてくださいねー😊💕 (2022年5月3日 16時) (レス) id: 5f3d433f1b (このIDを非表示/違反報告)
ちぃちゃん(プロフ) - 連休で時間がたっぷりあるのでシリーズ読み返していて、「回路…」の薮伊野にキュンときました。 薮伊野大好きですが子狼くん達のお話も大好きで読み返してはやっぱり作者さんの紡ぐお話大好きだなと改めて思いました。 (2022年5月2日 20時) (レス) id: bdaf2a3994 (このIDを非表示/違反報告)
夏夢(プロフ) - ましろさん» 食べられてしまいましたねー(^-^;そうなんですよ、お話の肝なのにさくっとし過ぎてしまいまして…これは覗き見案件なんでしょーか( ̄▽ ̄;) (2021年2月19日 20時) (レス) id: 5f3d433f1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏夢 | 作成日時:2020年3月20日 23時