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yt.

「そ、そう、そんなことが…」

「ヒカ笑い事じゃないからっ。尻尾千切れるトコだったかんね!」

一先ず戻った森の家で、事のあらましを聞いたヒカルくんが肩を震わせてる。

「大変だったね、みんな」

「いや俺でしょ?!」

「まぁまぁ大ちゃん。この子達のことは後でゆっくり説明するから、」

「頼む。早く鱗を」

俺を遮り、ユーヤが進み出てアタマを下げる。

クリクリとした虹色の瞳を真剣な色に変えて、ゲツエイの大ちゃんは頷いた。

「ちょっと待ってえーと」

短衣の裾から手を突っ込み、ゴソゴソやって。

「ぃてっ。…はいよ、ユーヤ」

するりと取り出したのは、森で見た虹色の鱗だ。

歓声を上げそうになって、慌てて互いの口を塞ぎあってる二人を尻目に、ユーヤがぎゅっと鱗を握り締める。

「ありがとう…!」

「ありがとね大ちゃん。ユーヤ、早速」

台所に走り込む二人を尻目に、二枚、三枚と鱗を提供する大ちゃんから、コータとリョースケが受け取ってる。

「キラッキラしてんな」

「ねー、不思議」

「おー痛ぇ。こんくらいあれば当分保つだろ?」

腹の辺りを擦ってる彼に、「お疲れさま」と声を掛ける。

「リョースケ、取って置きのお茶とお菓子をあげてくれる?」

「任せて!」

「頼むよ。コータくんはそれ、軽く割ってそこに入れてね」

欠片だけの硝子瓶を指せば、コクリと頷き、覚束ない手付きで割り始めた。

「もっと大胆にやって大丈夫だぜ」

「ぉ、おう」

大ちゃんに言われても、コータくん変なとこ真面目だからねぇ。


……

「なるほど、銀狼に炎紅(えんく)の一族か」

「そう。俺の子じゃないの判ってくれた?」

ポスンとクッションに座り込んだ彼が、鼻を啜るような仕草で「わかった」と答えた。

「それにしても…あのケイがそこまで」

「うん」

「ユーヤも…あれは魔の傷だろ」

「そうだよ」

「いいタイミングで銀狼がいるもんだ」

「意図してたわけじゃないけどね」

「なぁに、偶然は必然さ」

大ちゃんは一見、無邪気な男の子風だけれど、ゲツエイの年齢は誰も知らない。
『年齢』どころか、ほぼ全てが役に立つこと以外は謎の生き物だ。

「なぁ、この鱗で魔女は元気になるのか?」

「そーゆーこと。お、全部入ったな」

「バカにすんな。このくらい出来る」

キュッと瓶を封じたコータくんのクールな答えに、ケラケラ笑う大ちゃん。

「俺の鱗で元気になるから心配すんなって!な?!」

それは本当だけどね。


.

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夏夢(プロフ) - 黄色いうさぎさん» 黄色いうさぎさまはじめまして☺️わぁ、何度も読んで頂いてるんですね☺️ぉ、おおぅ旗部屋リピートも(恥(/▽\)キャッ)💦こちらこそありがとうございます😆励みになります💕 (2022年9月14日 12時) (レス) id: 5f3d433f1b (このIDを非表示/違反報告)
黄色いうさぎ(プロフ) - こんばんは、始めまして夏夢さん。夏夢さんの作品を定期的に読み直しています。回路…や尾行シリーズも好きです。旗部屋も😁どれも素敵なお話達、やさぐれた私の心を癒やしてもらってます。ありがとうございます (2022年9月13日 22時) (レス) id: ef1652ec47 (このIDを非表示/違反報告)
夏夢(プロフ) - ちぃちゃんさん» ちぃちゃんさま、拙話を寛ぎのお供にだなんて、恐縮でございます😆ありがとうございます(照)💕子狼くん、またお目見えしました時は遊びにきてくださいねー😊💕 (2022年5月3日 16時) (レス) id: 5f3d433f1b (このIDを非表示/違反報告)
ちぃちゃん(プロフ) - 連休で時間がたっぷりあるのでシリーズ読み返していて、「回路…」の薮伊野にキュンときました。 薮伊野大好きですが子狼くん達のお話も大好きで読み返してはやっぱり作者さんの紡ぐお話大好きだなと改めて思いました。 (2022年5月2日 20時) (レス) id: bdaf2a3994 (このIDを非表示/違反報告)
夏夢(プロフ) - ましろさん» 食べられてしまいましたねー(^-^;そうなんですよ、お話の肝なのにさくっとし過ぎてしまいまして…これは覗き見案件なんでしょーか( ̄▽ ̄;) (2021年2月19日 20時) (レス) id: 5f3d433f1b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:夏夢 | 作成日時:2020年3月20日 23時

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