嘘つきカップル (ページ26)

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足の踏み場もないほど床に細々したものが散らばり、その中をうごめく生徒たち。校内は文化祭1週間前という年に一度の時間を食い尽くすように色めき立っている。

文化祭前の7日間はその準備のために全ての授業が潰れるこの学校の文化祭は県内でも高校らしくないクオリティの高さで有名だ。メイド喫茶というお決まりな出し物を選んだ私のクラスも、その噂通り内装から衣装、メニューまでかなり力を入れている。シフト制で回されるメイドの衣装はどうやら家政コースを選択した人たちの手作りだそうで、既製品に手を加えるだけとはいえ一人一人サイズも違えばデザインも違う。という事で、余りものを希望していた私は見事にメイド役として配置され、まさに今衣装のサイズを測っているところで。

「うわウエストほっそ内蔵入ってる？」
「Aちゃん制服のスカート膝上だし、メイド服もう少し短くしてもいい？いいよ！ありがとう！」
「二の腕細いから出していきたいよね…パフスリーブとかどう？」
「ブリムなんだけど、Aちゃん髪の毛黒いし黒のレース編み込んだらかわいいと思うんだよね」

「なんか、気合い入ってるね？」
「当たり前でしょ！？」
「っひ」

般若の様な顔で詰め寄られ、思わず引き攣った声を上げる。
採寸のためと半袖半ズボンの体育着に着替えた私は、家政コースの子たちに囲まれ、身体中にメジャーを巻き付けていた。もちろん、着ている体育着は自分のものだ。

「確かに、うちの文化祭豪華だし気合入るよね」
「え？いや、何言ってるの？Aちゃんのこと今以上に、とびきりかわいくして剣持くんのこと脳死させるために決まってるじゃん！」
「……え？」

スペースキャット。こういう時に使うんだ、きっと。

「最近登下校一緒なんでしょ？見かけたひと結構いて噂になってるよ！」
「ラブラブすぎて羨ましいんだけど！」
「幸せわけやがれー！」

楽しそうに笑う彼女らと、苦笑いをこぼす私。
確かに私と刀也くんは二週間前から登下校を共にしている。朝は早く集まって私は勉強、刀也くんは朝練。夕方は刀也くんの部活がある日は勉強して待ち、それ以外の日はそのまま二人で下校。登校の時間は今までと変わらず唯一変わったのはそこに彼がいるということだけ。下校の時間は彼に合わせているから随分と遅くなったけど、家にいる時間が減るというメリットがあった。のだけど、

「(どこまでも計算高い人だな、刀也くんは…)」

全ては彼の掌の上、ということらしい。