ペット以上 コイビト未満 【チョロ松】

一瞬 ページ39

他の異性に目を向ける良い機会、ね…
片思いだとはいえ好きな人に、そう言われるとさぁ……私チョロが言ったとおり他の人に目を向けた方がいいのかな。



「A？」




『……っ！
あ、ごめ、トイレ行ってく……っ！？』




「え、あ……っ！」




ひょこっと顔をのぞき込んできた彼に、こんなひどい顔を見せたくなくて離れようと
勢いよく立ち歩き出した時だった。彼が横に置いていた雑誌に足を取られる。
声をあげる間もなく、私の体はバランスを崩していく



……っ！



………あ。




あまり衝撃はなく、目の前のチョロ松が私を抱きかかえるようにしていた。
きっと彼のおかげで痛い思いをしていないのだろう
気まずさもあったが、とりあえず謝っておく



『……ご、ごめん』




「…ったく、お前もう少し落ち着いて行動しなよ単細胞なワケ？
危なっかしくて目が離せないだろ、僕ぐらいだよ？助けられるの」




彼は、こっちが愛されているのではないかと錯覚してしまうほどに
愛おしさがにじみ出るような微笑で。







そんな、そんな
意地悪そうなこと柔らかな声色で言わないで。
そんな優しい笑顔で私を見ないでよ





目が離せないなら







私を助けられるのは、アンタしかいないなら









『なら……私の傍にいてよ』








え？と漏らした彼の薄い唇に
グッと顔を近づけて重ね合わせる。








彼にする初めてのキスは甘いものじゃなくて
この繋がっている部分から自分の想いが、一瞬
そう一瞬でいいから彼へと伝わってくれないかと
苦く胸が絞められるものだった

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