４０億の時の針

時・16 ページ18

◆ 太輔・side ◆

探検がてらにいろんな道を行っていたら 細い小道を見つけた。


曲がったと同時にぶつかってきた人…


これは 偶然なのか？


それとも…



「藤川様！！」


「え？」



めちゃくちゃ 驚いてる…



「今、気づいたの？」


「えええええっ！？な、何で！？」



何でって…



「いや、俺 朝の散歩、そんなことより 服… 」


「お！お散歩！！」



いや、そんなに驚く？？



「ふぉおおおお！！君がトイプーのベルちゃんですか！」



え…



何で… ？



「知ってる… ？」


「え？」



この子…



もしかして 俺のこと知ってるのか？



「いや、名前… 」


「え？名前… ？あ！！」



焦ってる…


やっぱり 知って…



「さ、さっき この子の名前 呼んでたじゃないですか！」


「え？そうだっけ？」



呼んだ？…



あ、そう言えば 呼んだかも…



疑い過ぎだな、この子はそんなことないのに。



きっと この子は 俺のことを知らない。



知らないんだ…



「… 川様？藤川様？」



はっ！！



「この先の公園に行かれるんですか？」


「え？公園あるの？」



吉田さんが真っすぐ指をさした。


奥に緑の林が見える…



「大きな公園ではないのですが、緑豊かで癒しの場所ですよ」


「そうなんだ、知らなかった」



大都会でそんな公園があるなんて。



「吉田さんも癒されに行ってるんだ」


「ええ、家が公園が目の前なので、よく行きます」



公園の前…



「この辺、良い所だよね」


「ですよね… はっ！！」



ん？




「やば！！」


「何？どうしたの？」



急に焦りだしたぞ…



「ち、遅刻！」


「え！？」



あ、そう言えば 仕事の時間だね…



「あ、でも、バス停すぐそこだし、ほら、バス来たよ」


「いえ、あれには乗らないので！では！！」



乗らない？



「ちょ、店まで かなりあるでしょうが！」


「え？はい、歩いて行ってます」



歩いて〜〜！？



「ちょ、ちょ、５キロ以上あるけど！？」


「え、あ、はい、あの、私 もう行き… 」



嘘だろ…



「バス乗ればいいじゃん… 」



「すみません！行きます！！行ってきます！！」




あ…




…




「い、行って… らっしゃ〜い… 」




凄まじい勢いで駆けて行った彼女…




俺がしつこく話しかけたことで 歩きが走りになってしまった。




でも、バスなら 二区間ほどなのに…




小さくなる背中をジッと見つめた。

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