４０億の時の針

時・17 ページ19

まさか、昨日も会って…



「朝も会うなんて… 」



これって、何なのかしら…



「今日は わかめか、おにぎり２個って」


「だって 今日 寝坊しちゃって」



猛ダッシュをし遅刻はギリギリセーフ。でも、朝ごはんのおにぎりを食べる暇がなかった。


結局、お昼ご飯として 食べていた。



「ほら、唐揚げ 恵んでやる」


「じゃあ、僕は 奥さん特製の この卵焼きあげるね」



おお！！



「やった！豪華になった！」


「東さん、荻野さん！あざーす！！」



東さんは呆れ気味、荻野さんは苦笑い。



「でも、マジでちゃんと食えよ、ってか、節約は ほどほどにしろ」


「そうそう、また 倒れちゃうからね」



あ…



「うん、すみません」



謝った手前、今の状況を変えるつもりはない。


あと 数ヵ月の辛抱。


この数ヵ月を頑張りなさいっていうことで 神様はご褒美をくれたんだと思う。


そう言えば、太輔は あの辺に住んでるのかな？


最近 大きなマンションが次々できたから、引っ越してきたかもしれない。



「迷子になってなきゃいいけど… 」



太輔って 方向音痴っぽいから(あくまでイメージ)


でも、ベルちゃんの名前をなぜ知ってる？聞かれたときは驚いた。


なんとか 誤魔化したけど…



「ティンカーベルって言わなくてよかった… セーフ」


「でも、トイプーって言っちゃった」



見た目でわかる犬種でよかった。



「そそくさと来ちゃった… そっけなかったかも… 」



一日中、こんなことばかり考えていた。


頭の中は 太輔でいっぱいだった。



「… 会えたら、渡そう」



そう何度も偶然があるとは思えないけど 紙袋の中にコソッと入れた。



「お先に失礼しまーす」


「お疲れ様でした」



いつも通り 定時で上がり、朝と同じように歩いて家に帰る。


秋になり 陽が短くなってた。



「寒くなってきたなぁ… 」


「帰ったら コタツ 出そうっと… 」



大通りから路地へと曲がる。


ここは、朝 太輔と会った場所…



「いるわけないよね… 」



わかってはいたけど しょんぼりと緑の小道を入って行った。



すぐに見える 公園。



さすがに散歩をしている人は少ない。



太輔とベルちゃんも当然いなかった。




「… やっぱり そんな偶然ばかりないよね」




わかっていても探してしまう…




結局、その日は会えなかった。




でも、翌日 家から出ると公園に太輔がいた。

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