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艶やかな外跳ねの黒髪。
19歳とは思えない色気に拍車を掛ける目の下の泣き黒子。
宝石のような翡翠色と深紅色のオッドアイ。
その目は細められていて、何処か物憂げな表情を浮かべ浮世離れしたような儚そうな雰囲気を纏っていた。
「―――――……一郎……??」
――――……少なくとも、自身が知る彼とは大いに違う姿の彼が目の前に立っていた。
(―――……え、一郎が何で渋谷に……いや、いても可笑しくは無いけど……僕が知ってる一郎は……)
誰だ、この目の前に立っている青年は。
この、今にも崩壊して消えてしまいそうな、この青年は誰だ。
(――――……静かな理由が、分かった気がする。
喋れるわけがない、今にも消えてしまいそうなこの青年を目の前に。
その時、誰かが小さく「あ」と声を漏らした気がして顔を上げる。
今まで物憂げだった青年は何かを決めたような表情を浮かべて辺りをキョロキョロとしていた。
そしてそのまま何処かに向かう気なのか、歩き出したのだ。
(――――………待って、そんな壊れやすいのに、一人で何処に行く気なの)
そんなことを考えてしまう自分の思考に驚きつつも目の前の青年がこちらに向けた背中から視線を離すことが出来ない。
自分が知る彼は、あんなにも脆かっただろうか。
あんなにも弱いような、儚いような彼だっただろうか。
知っている筈だ、彼を、『山田一郎』という人物がどんな人間かを。
だが目の前の彼は自分が知る『山田一郎』とは大いに違い過ぎた。
――――――……そう、違い過ぎたからだ。
そんな彼に対して、興味がわいたからだ。
――――……決して、背中を向けた彼に、まるで自分の方が置いて行かれてしまうような、そんな錯覚を覚えた訳では、ないのだ。
「――――……っ……ぁ………あー!!一郎だぁ!!」
「!!」
(…大丈夫だよね、ちゃんと……いつも通りに振る舞えてるよね…??)
若干震えているようにも見える手を見て見ぬ素振りをしつつ、目の前の彼の背中に抱き付けば腰に腕を回す。
すると足を止めた青年が振り返り、あの瞳に自分を映した。
(――――……嗚呼……今、僕はちゃんと……見て貰えてるんだ)
らしくもない思考を横目に勤めていつも通りに無邪気に首を傾げてみれば、彼も同じように首をそっと傾げ、こう自分に告げた。
「――――…俺は、山田一郎じゃないんだ」
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だふにあ - 続きをお待ちしています!!!!!!!とても気に入りました!!!!!!! (2021年6月16日 19時) (レス) id: db3e93e9ba (このIDを非表示/違反報告)
白玉うどん - 続きお待ちしてます!!頑張って下さい!!めっちゃ好きです!! (2021年5月21日 21時) (レス) id: fccb4e77b5 (このIDを非表示/違反報告)
ふーちゃん(プロフ) - 続き待ってます!頑張って! (2021年4月11日 18時) (レス) id: 9172c0bbed (このIDを非表示/違反報告)
@黒(プロフ) - 半分ニートガールさん» コメントありがとうございます!!実は私も結構この設定はいろんなシチュエーションが書けるので面白いです(((更新がんばります!! (2019年7月23日 11時) (レス) id: 124f92440d (このIDを非表示/違反報告)
@黒(プロフ) - 文月さん» コメントありがとうございます!!面白いと言っていただき嬉しいです!!更新ゆっくりですが頑張ります!! (2019年7月23日 11時) (レス) id: 124f92440d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:@黒 | 作成日時:2019年3月21日 16時