検索窓
今日:4 hit、昨日:0 hit、合計:10,335 hit

11call 本能と揺らぎ ページ12

桜の木がある公園で見たのが、最期の笑顔かもしれない。そんなことはないと思っていたけど、本能がどこか確信ありげに伝えてくる。

それでも、能天気にわたしは考える。典明くんは帰ってくると。

典明くんのいない教室は、わたしにとって虚空も同意義だった。移動教室もお昼の時間も、なんの楽しみもなくて、お弁当も味が薄く感じる。彼はスグ帰ってくる。

「雨宮さん、次移動教室よ」

クラスメイトが、自分の机でボーッとしているわたしを見兼ねたのか、話しかけてくれた。周りを見渡すと、人っ子ひとりいなかった。

「ありがとう……」

その子に告げるとそそくさと、教室から出ていく。あぁ、大丈夫。典明くんはすぐ帰ってくる。もう同じ学校ではないけれとも、もっと会えるようになる。

中学の頃は、先生の気遣いかはたまた偶然か、典明くんとは同じクラスだったのに。

***

「花京院くん、今度映画でも観に行かない?」

読んでいた本を静かに閉じて、紫の瞳がこちらへ向く。

「もちろん。どの映画かな?」
「それは、花京院くんに任せるよ」
「なんだいそれは。提案者は君なのに」

彼は可笑しそうに笑うと、どこからか上映している映画のパンフレットを取り出した。

「君は好きなタイプの映画とかあるかい?」
「映画はあんまり詳しくなくて……花京院くんの好きなの選んでよ」

花京院くんは映画のパンフレットを吟味し始める。真剣みを帯びた表情は、男前そのもの。

「雨宮さんは、インディ・ジョーンズの前作を観たかい?」
「うん。お父さんが連れてってくれたよ」

観ていて面白いだけではなく、楽しかった覚えがある。

「気に入った?」
「とても良かったよ。遊園地の乗り物に乗っているみたいで、楽しかったの」

カラー両面印刷のパンフレットを手に持って、彼はわたしに差し出す。それを受け取ると、肌触りの良い紙が手を滑る。

「じゃあ、この映画にしよう」
「でも君、パンフレットをちゃんと見てないじゃあないか」
「うーん、見なくても花京院くんのパンフレットを見る顔で充分だよ」

そう伝えると、疑問が顔から溢れる花京院くんがいた。
分からなくていいよ。今は、あなたの色んな表情を見ているだけで満足。

12call 知らない一面→←10call 金平糖



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.5/10 (35 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
33人がお気に入り
設定タグ:ジョジョの奇妙な冒険 , 花京院典明   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:山葵しょうちん | 作成日時:2017年10月4日 2時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。