74話 手遅れ ページ28
「くっ……」
「本体じゃなくても苦しいでしょ。表面から燃えてるのとは訳が違うからね」
つい先ほどまでこの鬼を覆いつくしていた炎は、鬼の細胞の表面が燃えていただけ。栄養素や酸素やらを運んでいる血管から熱を放出させ、発火させている今の状態の方が苦しい。
だからこんなにも、ボロボロと鬼の形が崩れていく。
「…すごい……」
「これが本体ならもうとっくに焼け死んでるかもね」
「なめ、やがって……!」
「さあ、苦しいなら口を割ることだね。居場所教えてくれたら消してあげる」
車両に燃え移らないよう微調整しながら、鬼に高温の熱を与え続ける。偽物と言えど痛覚はあるみたいで、燃え続ける炎の中で苦しそうな声が聞こえてくる。
「うぐっ…」
「まだ粘るの? そろそろ吐いてくれないと困るんだけど…」
「黙れ…どうせ分かったところで……もう手遅れだっ…」
「……どういうこと?」
「……お前らが夢を見ている間に…準備が整った、からさ…」
「準備……?」
「フッ…そうだ。この列車全体がっ…僕の肉であり血で出来ている……その意味が分かるかい?」
……列車全体が、こいつの細胞で構成されてるってこと?
それはつまり、本体となる鬼の体は……この列車!?
「……短時間にそんなことができるの?」
「……人間と違って、再生能力が高い僕からしたら簡単なことさ」
私の驚きと少しの動揺が、鬼へと送っていた熱を弱めていく。それはすなわち、この偽物を完全に焼き尽くすことができなかったわけで。
「鬼の居場所を聞き出す前に、とんでもない事態にようやく気付いたんだね」
「……それじゃ…今のこの状況は……」
「乗客乗員合わせて二百人余り。おまけにこの車両は木造だ。炎が操れたところで守り切れるはずがない」
「…っ……」
「この列車に乗っている全員を、僕が“おあずけ”する前に助けることができるかな?」
フフフッと笑いながら、その姿を車両へと消していく鬼。その様子を茫然と見ながら、乗客乗員の安全が確保でき、最短で避難できるルートを考えた。
……この列車は走り続けている。生身の人間がその状況で逃げ出すことは不可能に近い。
「……完全に袋の鼠ってわけねっ……」
・
146人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
☆りんご☆(プロフ) - りんごさん» コメントありがとうございます! 宇髄さん流に褒めていただきとても嬉しいです! もっと派手に盛り上がるよう頑張りますね! (2020年3月13日 0時) (レス) id: 0283dc52d2 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - めちゃくちゃ面白いです!もう派手派手です((←更新頑張ってください! (2020年3月8日 16時) (レス) id: a5bea457da (このIDを非表示/違反報告)
☆りんご☆(プロフ) - サクラさん» コメントありがとうございます! 炎炎ノ消防隊はアニメしか見てないですけど、面白いので是非見てみてください!! 時間はかかりますが頑張ります! (2020年3月7日 2時) (レス) id: b4140779db (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - すごくおもしろいです。炎炎の消防隊は読んだことがなかったのですが、この夢小説を読んで興味がでました。続きが楽しみです。 (2020年3月5日 23時) (レス) id: 999b324e53 (このIDを非表示/違反報告)
☆りんご☆(プロフ) - 夜桜さん» コメントありがとうございます! そこまで楽しみにしていただけてとても嬉しいです(*´ω`*) 納得のいく文章を考えるのに時間がかかりますが、早くお届けできるよう頑張ります(`・ω・´) (2020年3月4日 1時) (レス) id: 0283dc52d2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:☆りんご☆ | 作成日時:2020年2月25日 15時