絵本2 (ページ13)

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桜火視点② ページ13

敵国意識が強いのだろう。
　俺は、彼の視界に入らないよう、その場から離れようとした。
『Gグループ、個人番号○○、リュウスケ』
　今までにないほど、周りがザワりと騒がしくなった。
「リュウスケだと？」
「さすが英雄の息子。」
「親の七光りだろ？」
　英雄の息子？
「…へえ…あの人選ばれたんだ。」
　チャンドラが、ボソリと、聴こえない程度の小さい声の敵性語で呟く。
「知ってるのか？」
「ああ、あいつあれだろ？人類で初めて〜」
「ああ、あの英雄の息子か。」
　敵性語の会話を聞き耳立てながら、立ちすくむ。
　英雄の息子、か。
「どれだけ優秀か、見物だな。」
「おいおい、俺選ばれなかったんだぞ。簡単に言うなよ。」
『以上。選抜された5名は、段上に上がるように。』
「ほら行けよ」
　チャンドラは、俺の顔をチラッと見たあと、ザッと人の間をすり抜けていく。
　俺は、彼の後を追いかけ、段上に上がる。
　1番端に立つと、コンピューターに挨拶をするように言われる。
　ロボットが何台ものカメラを俺たちに向け、撮影をしていた。
　この様子は全世界で放送されているのだろう。
　人類の存亡をかけた、大きなプロジェクトが動いた。
「チャンドラです。頑張ります。」
　下手くそな公用語で、チャンドラは挨拶をしている。
　これから、プロキオンに乗るまでの訓練期間、一緒にいなくてはならないのか。
「桜火です。俺は国のために俺はここにいます。」
　そうだ。俺は、そのためにここにいる。
「俺がプロキオンに行きます。必ず。」
　俺はプロキオンに行かなくてはいけない。
　俺が前線に立たなくては。

　無機質なフラッシュが眩しく光る。

　人類の存亡を賭けたプロキオン計画が、始まる。