絵本2 (ページ12)

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風男塾ミュージカル　選抜試験　#桜火視点① ページ12

第一次選抜には多くの国からの受験生がいた。
　戦争など経験した事もないような平和ボケした細く白い肌をした奴、筋肉質な奴、いかにも頭脳だけで這い上がってきた奴、変人、敵国の奴、宇宙について夢を語る奴。
　地球を救うという目的を持ったライバルであるが、どいつもこいつもどこかふわふわしていた。
「やぁ。同じグループだね。」
「ああ。よろしく。俺は桜火だ。」
「よろしくお願いします。チャンドラです。」
　それぞれの自己紹介を行い、宇宙についての課題を行った。
　これは知能テストだろう。いかに早く、正確に協力プレイを行うのか。
　それが合格の課題だろう。
「結局はマザーコンピューター次第とはいえ、緊張しますね。」
「ああ。」
　チャンドラは公用語が苦手らしい。学校で習うような堅苦しい文章で喋っているのが少し気になるが、誰でも初めはそうだろう。
「桜火はアジアの出身なんですか？」
「ああ。チャンドラは？」
「…○○という国です。」
　聞き馴染みのある国の名前。
　教えこまれた敵国意識に身体が硬直する。
「…へ、へえ…」
「アジアのどの辺なんですか？」
「…それは、」
　ピピピ、とコンピューターのアラーム音がなる。
『合格者を5名、選出しました。今から名前を読み上げます。』
　機械で加工された音声が、ホール全体に流れる。
　ゴクリ、と息を飲む音が隣から聞こえる。
　このプロキオン計画に賭けた想いは人それぞれだろう。
　俺は、国のために選ばれなくてはいけない。
『Aグループ、個人番号○○、ラブ』
　ざわりと声がする。
　振り向くと、ラブ、と呼ばれた少年が「当然だ」と言うようにすました顔をしていた。
「へえ、あれが合格者。」
「細いな。宇宙に耐えられるのか？」
『Dグループ、個人番号○○、アストラ』
「え、僕？」
　素っ頓狂な声がきこえる。
　見ると、ラブという男よりひょろりとしていて、宇宙に耐えられるような人間に見えない。
「おい、本当にあれが合格者か？」
「体力はあまり関係ないのか？人類の存亡を賭けたプロジェクトだぞ？」
『Fグループ、個人番号○○、桜火』
　ギョッとしたようにチャンドラが俺の方を向いた。
　当然だろう。敵国の人間だ。
　個人番号によって俺の出身国が分かったせいなのか、チャンドラは1歩、下がった。
『Fグループ、個人番号○○、チャンドラ』
　チャンドラは目を見開き、コンピューターを見た。
　手では強く握り締めたあと、俺を一瞬見て緩めた。